血液型占いや星座占いは、朝のテレビでも定番のコンテンツですね。
確認してから通勤する方も多いのではないでしょうか?
血液型の話などは初対面の際に使える話題として鉄板です。しかし、ロジカルな思考を旨とする
経営コンサルタントの視点から見ると、また違った絵が見えてきます。
今回は、やや批判的に、「なぜ血液型占いは当たっているように【見える】のか」という話から、同じ過ちをビジネスでしてしまわないために気をつけるべき点について書きます。
A型の性格診断
唐突ですが、読者の血液型は何ですか?
A型の人は下記の文章を読んで、自分に当てはまるかどうか考えてみて下さい。
B型、O型、AB型の人は、A型の性格ってこんなものかな、と思いながら読んでください。
<A型の性格>
- あなたは他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っており、それにかかわらず自己を批判する傾向にあります。
- また、あなたは弱みを持っているときでも、それを普段は克服することができます。
- あなたは使われず生かしきれていない才能をかなり持っています。
- 外見的には規律正しく自制的ですが、内心ではくよくよしたり不安になる傾向があります。
- 正しい判断や正しい行動をしたのかどうか真剣な疑問を持つときがあります。
- あなたはある程度の変化や多様性を好み、制約や限界に直面したときには不満を抱きます。
- そのうえ、あなたは独自の考えを持っていることを誇りに思い、十分な根拠もない他人の意見を聞き入れることはありません。
- しかし、あなたは他人に自分のことをさらけ出しすぎるのも賢明でないことにも気付いています。
- あなたは外向的・社交的で愛想がよいときもありますが、その一方で内向的で用心深く遠慮がちなときもあります。
- あなたの願望にはやや非現実的な傾向のものもあります。
・・・どうでしたか?当てはまりましたか?
実はこの性格診断は、1948年に心理学者バートラム・フォアが作ったもので、A型の性格とは何の関係もありません。
血液型にかかわらず、この診断結果を見せた人のほとんどが「自分の性格を言い表している!」と答えたそうです。
バーナム効果
人はあいまいな情報を提示されると、それを都合よく解釈し、自分に合っていると思うところだけを強く記憶し、自分に合っていないところは忘れてしまいます。
これは心理学で「バーナム効果(フォアラー効果とも呼ばれる)」と呼ばれている現象で、あらゆる占いはバーナム効果による「勘違い」だと筆者は考えています。
数年前、作家の松岡圭祐は自身のホームページに「究極の血液型心理検査」というコーナーを作りました。
このコーナーを利用した方の8割〜9割は「よく当たっている」と回答したそうです。
しかし、この心理検査は無作為に表示されるもので、違うパソコンでやれば違う結果が出るというものでした。
作家がこのコーナーを作った目的は、血液型診断に意味がないことを証明するためだったのです。
余談ですが、占い師が使っているテクニックはバーナム効果だけではありません。
その手法は「コールドリーディング」として体系化されています。
ビジネスで一般顧客や取引先を説得するときにも応用できる手法ですので、興味がある方は関連書籍を調べてみてください。
日常に見られるバーナム効果
それでは、人はなぜこのような間違いをおかすのでしょう。
理由は「認知的にラクをしたいから」です。情報を提示されたとき、そのひとつひとつについて内容を理解、妥当性を検証していては、疲れますし時間もかかってしまいます。
そこで人間の脳は、既に持っている情報を活用して情報の選択を行っています。
よほど意識していないと、人は自然にバーナム効果の影響を受けてしまうようです。
日常の例でいうと、女性が何がミスをすると「やっぱり女性は・・」と言う男性がいます。
同じミスを男性がやっても「やっぱり男性は・・・」とは言わないのに、です。
これもバーナム効果の一種で、女性に文句を言った男性が普段女性一般に対して偏見を持っており、その偏見に適合する情報だけを重視してしまうから起こる現象です。
他にも、「関西人はみんな面白い」というのもあります。
筆者は若い頃、大阪で3年ほど働いた経験があります。
そのとき努めていた会社の上司は無口で冗談ひとつ言わない人でした。
関西人だからといってみんなおしゃべりで面白いことを言うわけではないのだな、と当たり前の事をそのとき理解しました。
厄年も同じように説明できます。(筆者は来年厄年です)
本来、一年もあれば良いことも悪いこともそれなりに起こるでしょう。
厄年の一年間だけ、悪いことの印象が強くなってしまいます。
本当は、良いことも同じくらい起きているのかもしれないのに。
「日本人だから」「福岡県民だから」「外国人だから」というように、認知的にラクをしたいがためについ人をステレオタイプに当てはめてしまうことはよくあります。
「ああ、いま私はステレオタイプなことを考えて、目の前の人のことをしっかり見ていないな」と意識するだけで、より深い思考ができるようになるでしょう。
仕事で活用するバーナム効果
「バーナム効果の罠」は仕事にも影響を及ぼします。
プロジェクトを進めたいばかりにマイナス面について無視または過小評価する、以前成功したプロジェクトの経験にとらわれて判断する(その頃とは状況がまるきり違っているのに!)といったことは、認知的にラクしたいがための行動です。
こういった罠に陥るのを避けるためには、しっかりと物事を細かく分けて考えることと、数字で表現することの二つが必要です。
「かならず成功します」ではなく、「この前提で考えると売上は**円」、「3年前も失敗したからやらない」ではなく、「3年前の失敗はAとBが原因、いまはAは改善したので、Bの影響だけを考えると・・・」というように、です。
仕事をうまく進めるには、物事を多面的に見る必要があります。
バーナム効果に惑わされず、自分の思考に偏りがないかを常に自己点検しましょう。
余談になりますが、血液型占いの話をしたり、お祓いに行った方がいいんじゃないかとすすめたり、過去の成功事例を御社に適合するかまともに検討せずに押しつけてくる経営コンサルタントに仕事を任せている方、よく考えてみて下さい。
彼は本当に経営コンサルタントですか?もしかしたら、占い師じゃないですか?