これは有名企業であるインテルのエピソードだ。
この会社にも苦境があった。
それまで会社を支えてきたメモリ事業に
競争力がなくなってきたが、
撤退すべきかどうかの結論が出せなかった。
メモリ事業はインテルのコア技術と
考えられていたし、フルラインの製品を
揃えているべきというマーケティング上の理由もあった。
議論が膠着状態になったとき、
当時の経営陣であるアンディ・グローブとゴードン・ムーアは
こんな会話をしたそうだ。
「僕らがお払い箱になって、
取締役会が新しいCEO(最高経営責任者)
を連れてきたら、そいつは何をするだろう?」ゴードンは間髪いれずこう言った。「メモリから撤退するだろうな」
私はしばし呆然と彼を見つめて、それからこう言った。
「それなら僕らが一度会社を辞めたつもりになって、自分達の手でそれをしたらどうだい?」ーなぜリーダーは「失敗」を認められないのか リチャード・S・テドロー著より
このあとCPUの製造に軸足を移した
インテルの躍進は語るまでもないだろう。
視点を変えるのは難しい
視点を変えるのは難しい。
これまでの歴史や自分の思考のクセに
どうしてもしばられてしまうからだ。
その分野に詳しければ詳しいほど、
変えられない理由ばかりが頭に思い浮かぶ。
インテルの経営陣のような「自分がクビになって、
新しい経営者が来たら、彼はまずなにをするだろうか」という視点は、
一旦自分のしがらみから離れて、冷静に対象を見るという意味で有益な考え方だと思う。