あの人はなぜあんな行動を取るのか?立方体モデルで考える

「あの人は、なぜあんな行動を取るのだろう?」

他人の頭の中を覗くことはできない。
ただ、外部に出ている行動から原因を推察することは、ある程度は可能だ。

今回はそのためのツールである「立方体モデル」について書く。

人間は、原因を考えるのが大好き(原因帰属)

人間は、何かの出来事が起きた際にその原因を考えるのが大好きである。
原因がわからなければ不安な気持ちのままでどうにも落ち着かない。

上司の何気ない発言にも「あれはどういう意味だったのだろうか・・」と悩んでしまった経験は誰にでもあると思う。
当の本人は軽い気持ちでの発言だったのかもしれないが、受け手側は原因について際限なく考えてしまう。

他人の行動の原因を推測し「こうに違いない」と判断することを、心理学では「原因帰属」という。
原因帰属には、大きく「内的原因」と「外的原因」の二つがある。

内的原因とは、たとえば上司の性格、行動の傾向、気分、願望・欲求、能力などである。
「上司が昨日私を叱ったのは、彼の虫の居所が悪かったからだ」という判断は内的なものだ。

逆に外的原因とは、他社や、その場面での環境や状況など、その人以外のところにある原因をさす。
「上司が昨日私を叱ったのは、社長が近くに居たために自分の権威を示す必要があったからだ、普段はあんなに叱らないもんなあ」という判断は外的なものとなる。

 

原因をしっかりと捉える(立方体モデル)

内的原因と外的原因の区分けは誰でも自然にやっていると思うが、自然に考えると原因を間違って捉えてしまうことも多い。
原因を正確に把握しなければ、本来は外的な状況(社長が見ているから仕方なく)のために上司に叱られたのにそれを内的な状況(上司とうまが合わない、上司は私のことが嫌いなのだ)と勘違いし人間関係がギクシャクしてしまうことになる。

 

ではどうすればいいのだろう?ケリーの立方体モデルと言われる考え方が有効に使える。

これは、以下の3つの次元から他人の行動を分類し、原因を探していく手法である。

  • 人物(一致性)
  • 対象(弁別性)
  • 状況(一貫性)

 

具体的な例にあてはめてみよう。

Aさんは部長職で、部署には総勢10名の部員がいる。
業績は計画に比べて大幅に下回っており、A部長は部員であるBさんをいつも呼び出しては彼の成績や態度について大声で叱っている。
Bさん以外の部員も成績は似たようなものだが、Bさん以外がそのように叱られることはめったにない。
先日懇親会があったが、酒の席でもA部長はBさんを隣に座らせ、いつものようにBさんを責め続けていた。

 

A部長はなぜBさんばかりを叱るのか、どのような理由が考えられるだろうか。

たとえば、A部長の性格が陰険である、BさんがかつてA部長がいじめられた上司にそっくりであり、なんとなく気にくわないなどといった理由であるのなら、それは「①人物(一致性)」、つまりA部長の内的な性質が原因だと考えたことになる。

 

いっぽう、BさんのA部長に対する態度が悪い、遅刻・無断欠席が多く勤務態度が悪い、報告書の出来がいつも酷いといった理由であるのならそれは「②対象(弁別性)」つまりBさんの振る舞いが原因であると考えたことになる。

 

もちろん、A部長とBさんどちらにも原因があることもあり得る。その場合は「①人物」と「②対象」の組み合わせが原因であると判断したことになる。

 

もしかしたら、A部長も好きでBさんを責めているのではないかもしれない。
上司としての職務から厳しい態度を取らざるを得ないだけで、本来は叱りたくない。
実際に休日に商店街でBさんと合った際はとても優しく終始笑顔で、コーヒーまでおごってくれた。
この場合は「③状況(一貫性)」に原因があると考えたことになる。

 

これらの状況を立方体モデルで表すと、図1のようになる。

 

■図1:立方体モデル
図1

A部長のみがBさんを叱り、社長や他の部員はBさんを叱らない【人物(一致性)】、A部長は他の部員や、妻子については厳しい態度を取らない【対象(弁別性)】、A部長は職場だけでなく飲み会の席でもBさんを叱る、ただ休日に商店街で会った際はとても優しかった【状況(一貫性)】という場合は、図1の青で塗りつぶした部分で説明できる。

立方体モデルで考えることで、A部長の行動が内的なものなのか外的なものなのか、それともその両方に原因があるのかが分析できる。
チャート型で分析すると下記のようになる。

図2:一致性、弁別性、一貫性による原因帰属判断チャート
図2
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まとめ

人の性質上、出来事が起きた場合のその原因がわからないと落ち着かない。
しかし、他人の行動についてはよくわからないことが多く、それが人間関係のストレスに繋がる。

今回説明した「立方体モデル」を使えば、他人の行動を分類した上で原因がどこに帰属するかを明かにすることができる。
もちろん、他人の心の中を覗くことができない以上、他人の行動を完璧に理解できるという訳ではない。

ただ、少なくとも自分の中で他人の行動について納得し、前に進むための助けにはなるだろう。

<参考文献>
クリティカルシンキング入門

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