出張中、電車移動の時間に菅野寬著「BCG流 経営者はこう育てる」を読んでいた。
経営者は、部下ではできない「つらい意思決定」を行わなければならないとし、
そのためには以下の4つの勇気を持つ必要があると書かれていた。
- トレードオフを理解したうえで、どちらかを捨てる勇気
- 不完全な情報下でも必要なタイミングで決断する勇気
- やめる勇気、変える勇気
- 必要ならば情を捨てて人を切る勇気
1.トレードオフを理解したうえで、どちらかを捨てる勇気
経営資源には限りがあり、全てのことがやれるわけではない。
あちらを立てればこちらが立たず、どちらにもいい顔をすることは難しい。
無理をすればどちらも失うだけだ。
どちらかを選べば、どちらかを捨てることになる。
もしかしたら捨てた方の選択肢がより良いものだったのかもしれない。
間違えていたら、会社の存続が危うくなるかもしれない。
自分の決断を信じて、選択肢を絞る勇気が必要になる。
2.不完全な情報下でも必要なタイミングで決断する勇気
情報が全て揃うことはまずない。どんなに調べても、完全にはならない。
そもそも状況は刻一刻と変わるものだし、人間が関わる行為であれば、相手が必ずしも合理的な行動をするとも限らない。
それでも必要なタイミングで決断する勇気が必要になる。
「まだ情報が揃ってない」といつまでも決定を先送りにすれば(分析麻痺、と言うそうだ)、タイミングを逸してしまう。
慌ててやり始めても、果実は得られない。
軍事学の大家クラウゼヴィッツは、「霧の中を進む勇気」という言葉を使ったそうだ。
かといって、情報がゼロないし非常に少ない状態で「えいや」と決断してしまうのはそれはそれで問題だ。
それは「必要なタイミング」よりも早すぎる決断であり、愚昧や蛮勇と呼ばれるもので、決して勇気ではない。
3.やめる勇気、変える勇気
自己否定というのは難しい。
人間は自身の言動に一貫性のあることを好む。
本来、状況が変われば、それに合わせて行動も変えるべきだ。
辞めることも、変えることも必要だろう。
それまで経営者の命令でその行動を取ってきた部下や取引先は怒るだろう。
変更の理由を丁寧に説明し、納得してもらう必要がある。
朝令暮改と批判されるのは、理由無く、説明無く変更を繰り返すからだ。
4.必要ならば情を捨てて人を切る勇気
中小・零細企業には多様性などという美辞麗句は要らない。
組織としてまとまって行動をするには、ある程度の価値観の統一が必要だ。
過去の功労者でも、自分を慕ってくれる人でも、自分と仲が良いとしても、どんなに有能だとしても、
組織のルールを守らず、周囲に悪影響を及ぼすなら、「泣いて馬謖を斬ら」なければならない。
私も数名の従業員に解雇を言い渡したことがある。
その日を迎えるまでは内蔵が痛くなるほど悩むし、解雇を告げるのにはいつまで経っても慣れない。
でも後悔はしていない。組織を維持するために必要なことだったといまでもそう思っている。
こうして考えると、経営者が人でなし呼ばわりされるのもわかる気がする。
つらい意思決定は、全員を幸せにはできない。(だからこそ「つらい」のだろう)
意思決定の結果不幸になった人達は、経営者を鬼だと罵るだろう。
幸せになった人は感謝してくれるだろうか?ほとんどの人は、それが当たり前だと思い、特段の感謝はしてくれないのではないか。
いやはや、経営者とはつらい職業だ。