そこにデータが、ソリューションがあるのに

もう前世紀の話になる。

とある企業でウェブを活用した電話帳システムを作っていた。
Internet Explorerがバージョン4くらいの時代だ。
HTMLは貧弱、CSSはまだ出たばかり、AJAXなんて影も形もない。
ウェブサーバを立ち上げ、プログラムはPerlを使って組んだ。

電話帳なので、電話番号と所属、氏名などのデータが必要となる。
納品先の企業は一部上場企業だったので、人事部がそれらのデータをホストコンピュータで管理していた。それを使えばシンプルだ。

しかし、窓口となった情報システム部の課長は、
「社員それぞれが自分でシステムに電話番号と名前を登録する仕様にせよ」と私に伝えた。
私は、人事がデータを持っているのであればそれを定期的にバッチ処理すればいいし、
入力作業を個人の善意に頼っていてはデータが不完全になる可能性が高い。また、人事異動の際に再登録が必要だ、などと反論した。

しかし課長は譲らなかった。
私も社会人になって二年くらいしか経っておらず生意気だったし、
近い将来に崩壊することがほぼ予定されたシステムを作るのは嫌だったので頑強に抵抗したが、
お客様の要望ならということで結局は折れた。

後日、課長の部下から聞いた話によれば、課長は人事部に頭を下げてデータをもらうのが嫌だったので、
自主入力にこだわったとのことだった。

解決策が明確でも、関係者の個人的な感情で、その最適な手段が選択できないことがある。
そこにデータが、ソリューションがあるのに、使うことができないのはもどかしい。

そのシステムは、最初は情報システム部からの度重なる周知もあって登録が進んだものの、
何回かの人事異動を経て、使われなくなってしまったようだ。

この後も社会人生活でいくつか同じような経験をした。
自分がもし社長だったら、もっと合理的な会社にできるはずだと思った。

あれから二十年以上が経って、自分は今社長をしている。
自分の感情に囚われて最適な意思決定をできないような社長にはなりたくないが、正直、うまくやれてるか、自信がない。

関連記事

  1. 「ぜんぜん準備してないよ」~自己ハンディキャッピングの弊害

  2. それはもう試して、ダメだったんだ

  3. 「改革が足りない」というマジックワード

  4. かたつむり

    カエルは茹でたら普通に逃げる

  5. 3種類のエラー(スリップ、ミステイク、ラプス)

  6. レール、分かれ道

    干渉効果を避ける。ルールを破るなら理由が必要

最近の記事

  1. 2022.09.15

    継続すること
  2. 2022.09.13

    必要な孤独

カテゴリー

読書記録(ブクログ)