思考法その1〜自分に甘く、他人に厳しく(基本的帰属錯誤)

唐突だが、あなたが上司から「なんだこの資料は?しっかり考えているのか!」と怒られたとしよう。
この場合の「しっかり」とは具体的には何だろうか。いろんな考え方があるだろうが、筆者は「筋道だって、偏りがなく、合理的に」という意図だと解釈している。
そういう資料こそが、誰かを説得し何らかの行動をうながすものだからだ。

コンサルタントというのは大きく「ロジカル系」と「エモーション系」に分かれる(私は前者)。ロジカル系のコンサルタントは、しっかりと論理の筋道をつけて考えるのが仕事で、そのことでお金をもらっている。

反対にエモーション系は「夢を描きましょう」とか「こうやって上手くいった事例があるから、君も信じてやりなさい、絶対うまくいくよ」とか言うタイプで、これはこれで価値のある活動なのだけれど、この辺はまた稿を改めて。

クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキングとは、人間が陥りやすい思考の落とし穴や先入観による影響を十分に自覚した上で、そこから脱却し、ものごとを冷静に、客観的に、論理的に考え、判断してゆく一連の考え方のことである。

なお、直訳すると「批判的思考」となるのだが、批判という言葉には相手を攻撃するイメージがある。クリティカルシンキングは決して相手を攻撃するためのものではないため、間違ったイメージを与えないよう訳せずにカタカナで書いている。

筆者とクリティカルシンキングとの出会い

筆者が東京の「ネットワンシステムズ」という会社で働いていた頃、勤務先の休憩スペースにあった本の中に「クリティカルシンキング入門篇」があった。当時の上司が置いていたらしい。何げなく手に取ったその本がとても面白くて、最後まで一気に読んでしまった。

それからクリティカルシンキングに興味を持ち、関連書籍を読みあさった。そこで得た知識は、人生の様々な場面で何かを決定する際にとても有効だった。
中小企業診断士の勉強を始めたのはそれから数年後のことで、一回の受験で合格できたのはクリティカルシンキングの学習を通じて物事の本質をしっかりと考える癖を付けていたからだと思っている。

というわけで、自分の頭の中の整理も兼ねて、今回から何日かに分けて、「筋道だって、偏りがなく、合理的に」考えるためのガイドラインとして「クリティカルシンキング」について書いてみたいと思う。

(1)自分に甘く、他人に厳しく【原因帰属(基本的帰属錯誤)】

人間は、他人の行動の理由を考える時にはその人の周囲を取り巻く状況からの影響(つまり、努力でどうにもならないもの)を軽視し、その人が個人的に持つ性質(性格や能力、これは努力で改善可能)の影響を重視しがちである。しかし、自分の行動の理由を考える際はこれがまったくの逆になる。

たとえば、友人Aが階段を踏み外してケガをしてしまったとしよう。「彼はなんとドジなんだろう!」と考えるのではないだろうか?
実際には、その階段は角度が急で、これまで何人もの人が足を踏み外しているかもしれない。また、大雨の直後で大変滑りやすい状態だったかもしれない。

数ヶ月後、今度は自分が同じ階段で足を踏み外してケガをした。その場合は「自分はなんとドジなんだ!」と考えるのではなく、急な階段だったとか、雨の直後で滑りやすかったとか言い訳が先に出るはずだ。

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人間関係の中で生じる早とちりや誤解の多くはこれが原因であるので、他人の失敗をその人の性質や能力のせいにしすぎないよう、日頃から気をつけよう。

コンサルタントとしての考え方

コンサルタントは、基本的帰属錯誤の罠に落ちないよう、常に注意しなければならない。
関与先の企業の社員が取ったある行動が、大きな売上減に繋がったとしよう。その社員は「自分のせいで会社に大きな損害を・・」と落ち込んでいる。
「あなたの責任は重大です、反省してください。だいたいあなたはいつも・・・」と責めるのは、コンサルタントのやることではない。その行動は適切だったのか、他の人がやったら上手くいくことだったのか、そして、「自分ならどんな言い訳をするか?」を考えた上で、社員に過度な責任をかぶせず、現象を分析し今後の対応策を考え、実行する(させる)のが、コンサルタントの仕事だ。

たいていの問題は、人にではなく、システム(構造、仕組み)のなかにある。

最後に

クリティカルシンキングの知識はとても汎用性が高いもので、人生のどんな場面でも有効だ。類似本もあるので、興味がある方はぜひ書籍を手にとって欲しい。

思考法その2〜ウチの会社は特殊(内部集団の過剰評価) 

思考法その3〜アイスは人を凶暴に?【第三変数の無視】

思考法その4〜努力は必ず報われる?【欠落したケース】

思考法その5〜叱れば成績が伸びる?【平均への回帰】

思考法その6〜いじめられる側にも責任が?【公正世界仮説】

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