「もっと集中して仕事できれば、残業せずに早く帰れるのに。ああ、私は集中力がないなあ」
こう嘆息する方のために、小学校の通信簿で6年連続「落ち着きがない」と書かれるほどに集中力のない筆者が、日々どのような工夫をして集中力を出すよう努力しているかを書いてみる。
集中のための環境
集中のためには「雑音のない環境を作る」ことが重要だ。これには二つのアプローチがある。
ひとつは、「雑音を消す」、もうひとつは「雑音のないところに移動する」、それぞれ見ていこう。
雑音を消す
1)ケータイを音無し、バイブなしモードにする
仕事中に突然、他者のスマホから独創性あふれる着信音が高らかに鳴り響くのは、迷惑以外のなにものでもない。読者のみなさんも職務中はケータイをマナーモードにしていると思う。
しかし、集中して作業したいときにはバイブの振動音や、机や鞄の中でほかの物体にあたって発生する音すら邪魔になってしまう。
そこで、マナーモード(着信音なし)かつバイブなしの設定にすることをおすすめする。
会社支給のケータイでも、周囲の迷惑になるのは変わりないので同じ設定にすればよい。
仕事が終わったらスマホを確認し、着信があれば折り返し電話すれば何の問題もない。
筆者は平日の日中はほぼ打ち合わせか、または公共交通機関で移動しているかのどちらかなので、着信を知っても、電話を取れない状況がほとんどだ。
そこで、スマホは常に「音無し、バイブなし」モードにしている。
打ち合わせや移動の合間にまとめて折り返し電話をかけている。
残念ながら、外線電話の音はどうしようもない。
ただし、時間毎に電話応対担当を決めて、即座に応答してもらうようにすることで少しは軽減できる。
2)ノイズキャンセリングヘッドフォンの導入
エアコンや電子機器から発生する低周波のノイズは、集中力を乱す要因となる。
これは、ノイズキャンセリングヘッドフォンを購入すれば即座に解決できる。(そこまでお金をかけたくない人は、耳栓を使ってもいい)
リアルタイムで逆位相の音波を生成し打ち消すという仕組みで、エアコンの低い音や電車やバスの「ゴー」という音が遠くに行ってしまう感覚。一度使うと手放せなくなる。
安全性確保のためか、人間の声の周波数帯はカットしておらず、むしろよく聞こえるようになる。
「音楽を聞いていないとはいえ、勤務中にヘッドフォンをつけていると上司からどんな嫌みを言われるか・・」という少し固い職場の方はこの技は残念ながら使えない。
ただ通勤電車のストレスは軽減でき、それだけでも価値のあるものなので、やはり購入をおすすめする。
雑音のないところに移動する。
1)会議室にこもる
オフィスは雑音にあふれている。
いっそ雑音のないところに避難してはどうだろうか?身近な場所として、会議室がある。
同僚に宣言した上で、会議室を1時間程度予約する。
そして、いまやらなければいけない仕事の資料だけを持ち込みひたすら作業する。
インターネットには接続しない。仕事をするしかないので、驚くほど仕事がはかどること請け合いだ。
だからといって終日会議室に籠もっていると社内での立場が悪くなるだけだろう。
あくまで、追いつめられた時のテクニックとして使えるものだ。
2)早朝、深夜に仕事をする
朝早く、始業時間の数時間前に出社して仕事をするのもいい。
通勤電車も混んでいない、電話もメールも来ない、同僚もいない、社外からの騒音もない環境は集中するのに理想的な環境だ。
朝ではなく夜に働いた方が、残業代が出る分お得かもしれない。
しかし、同じく残業している社員が話しかけてきたり、支社から電話がかかってきたりで夜は意外と集中できない。
やはり早朝出社がおすすめだ。早起きは最初はきついけれど、習慣化すればそれほど苦にはならなくなる。
カフェだと仕事がはかどる?
カフェだと仕事がはかどる、という意見をよく聞く。
これはどういうことだろうか?カフェは雑音だらけであり、上記の説を考えればむしろ作業が進まないように思える。
調査によれば(※)、カフェではかどる作業というのは特定のもの、具体的にはアイデア出しなどのクリエイティブな作業だけのようだ。
報告書作成や提携業務などはやはり雑音のない環境の方がはかどるとのことらしい。
カフェのガヤガヤした音声を流すアプリもあるので、いや、わたしはカフェの方が仕事がはかどる!という方は試してみてもいいだろう。
がんばるタイム
下着メーカーのトリンプがやっている「がんばるタイム」という制度がある。
これは、業務時間の12時半〜14時半の間、社員全員が会話、離席、電話禁止でひたすら仕事に集中するという制度で、導入により会社の生産性が向上したそうだ。
業種によっては外線電話に対応せざるを得ないこともあるだろう。
その場合は、電話担当を当番で決めてしまえば、担当以外の人は集中して仕事することができる。
筆者も試してみたところ、12時半〜14時半というのは昼食後であり、外部の刺激が少ない環境だとついウトウトして仕事に集中できなかった。
午後のこの時間は、私のようなタイプの人間は机で集中するよりむしろクライアントと打ち合わせをしていた方がいいようだ。
いまは、電話やメールの邪魔が入りにくい朝の7時〜9時を「がんばるタイム」としている。
パソコンの無線LANをオフにしてインターネットにつながらないようにし、さらにスマホを鞄にしまって外部からの情報を完全に遮断する。
この時間は、提案資料作成などの創造的な時間としている。
まとめ
どんなテクニックを駆使しても、一日の業務時間である8時間すべてを集中して仕事に取り組むことは不可能なように思える。
人間の集中力はそこまで持たないだろうし、たとえ8時間集中できたとしてもヘトヘトになって翌日の仕事に悪い影響が出そうだ。
大学の授業が90分単位なのも、人間の集中力がそもそも90分くらいしか持たないからそうなっているのではないかと想像する。
8時間の集中は難しいけれども、1時間程度の集中した時間を日に数回取ることは不可能ではない。
そのために必要なのは、雑音を極力減らした環境と、逆説的ではあるが積極的な休憩だろう。
職場環境によっていろいろ制限はあるだろうけれど、できるところからはじめてみてほしい。
※「成功する人は、2時間しか働かない」ジョシュ・デイヴィス著/徳間書店刊 p.195