仕事をするのが楽しければ、人生、あらかた問題ない。
人生の最大幸福は職業の道楽化にある。
富も、名誉も、美衣美食も、職業道楽の愉快さには比すべくもない。本多静六「私の財産告白」
私がこの本を読んだのはもう15年以上前だと思う。
メインテーマである「収入の一部を貯蓄し、もともとなかったものとして暮らす」は全くできていないが、
「職業の道楽化」という単語はずっと記憶に残っている。
就職氷河期に就職活動を行い、なんとかIT企業に滑り込んだ。営業職に配属になりそうなところを無理を言ってSEになった。
配属初日に800ページくらいあるJavaの入門書を渡され「これ読んできて」と言われてから今まで、常に知的好奇心を刺激される仕事をしてきた。
JavaプログラマからHTMLやフォトショップ、イラレなどを学び、UNIXサーバの管理者になり、ネットワークエンジニアになり、中小企業診断士となってコンサル会社に入り、独立した。
コンサルになってからは、たくさんの業界を見て、たくさんの問題に向き合ってきた。一つとして同じ内容のものはなかった。
職業が辛いと思ったこともある。相性の悪い上司や顧客に当たったり、納期が厳しかったり、トラブルに巻き込まれたり。
でも、どんなに厳しい状況でもいくばくかの「面白さ」を見つけるように心がけてきた。どうせやるなら楽しくやりたいと。
それが周囲の人からは「ふざけている」と誤解されることもあったが。
今は小さな会社の社長をやっている。
大きな成功はしていないが、自身とスタッフに給与を安定的に払える程度には回せている。
好奇心を持ち続けたから、職業を「道楽」として捉えてたから、なんとかやってこれた。
生真面目に捉えていたら、どこかで潰れていただろう。
ちょっと振り返れば、潰れていただろうポイントがいくつか思い浮かぶ。
富も、名誉も、美衣美食も持ち合わせていないけれど、辛いこともあるけれど、
愉快な職業道楽という意味では、まあ及第点だろう。
本多静六に言わせれば、「人生の最大幸福」を得られているのだから、多少の不都合には目を瞑ることにしよう。