当たり前のことをできるか

もう、かなり昔の話なのでいいだろう。
企業名が推測できないように、一部内容を脚色している。

ある企業への提案

独立して数年経った頃、公的機関の依頼を受けてとある企業の経営分析と改善策の提案をすることになった。
社長へヒアリングし、いくつかの資料をいただいた後、一週間ほどかけて提案書を作成、会議にて発表した。

その会議には、役員も同席していた。なんでも、以前は上場コンサル会社に居たそうだ。
一通り発表が終わると、役員の方がこう言った。

「いかにも中小企業診断士らしい教科書的な提案書ですね。
うちは数年以内の上場を目指しているんですよ?
もっと凄い、イノベーティブなことを考えているので、
この内容ではうちの役には立ちません。」

提案書の内容が教科書的と言われれば、確かにそうかもしれない。
誰も思いつかなかったような奇想天外なアイデアはそこには書かれておらず、
社内業務フローの改善と、既存の顧客層をベースにした販売拡大のプランが主だったのだから。

提案書に書かれている内容ですが・・・

トゲのある言い方に少し腹が立ったが、気を取り直して聞いてみた。

「そうですか、申し訳ありません。
参考までに教えて欲しいのですが、
役員の方は今後どのような事業展開を考えていらっしゃるのでしょうか?」

役員は滔々と自分の事業プランを語りはじめた。

途中まで聞いて、とても哀しくなった。
彼が話したのは、私が作成した提案書に書いてあるのと
ほぼ同じプランだった。しかも私の提案書よりも荒削りで、
詳細を詰めていないことがすぐにわかるような。

「すいません、まったく同じことが先ほどお渡しした提案書
に書かれていますので、よろしければそちらも参考にしてください」

と話して、いくつかの質疑応答を経て会議が終わった。

残念ながらコンサルの受注はいただけず、
提案書の内容を実行に移す手助けをすることはできなかった。

当たり前のことをやってこそ

もう5年以上前の話だ。

彼がやろうとしていたことは、私の提案書と同じだったのだから、
私が作った資料が少しでも役に立ってくれていたらと願うばかりだ。

ただ、思う。

当たり前のことを「教科書的」と軽んじている人が、
「凄いこと、世界を変えること」なんてできないのではないだろうか。

イノベーションを声高に叫び、日々の商売をおろそかにする会社や個人が、
それを生み出すことは難しいのではないだろうか。

その会社はまだ上場していない。

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