数字は嘘をつかないが、背後に作成者の意図がある。

仮面で握手

数字は嘘をつかない。1+1は2だし、10,000円のお釣りを間違えるものはいない。
数字そのものは嘘をつけないのだ。しかし、どんな数字も誰かが作っている。そして作成者には意図がある。

決算書は操作できる

中小企業診断士の勉強を始めた頃、決算書の分析で企業の状態がわかると思っていた。
システムエンジニア出身で会計のことを何も知らなかった自分は、これはすごいツールだと感動したのを覚えている。

資格を取り、仕事で様々な企業の決算書や会計データを見ることになってわかったのは、「決算書の数字は操作できる」ということだ。

操作可能な項目が多数ある

別に脱税や粉飾のことを言っているのではない。
また、何でもできる、というわけではない。たとえば、入出金などのデータを改ざんすることは難しい。
会計ルールには複数の手段を選択可能なものや、いかようにでも解釈できるものがある。
在庫の数え方一つで利益は変わる。また、減価償却費を計上しないことも可能だ。
もっと簡単な例で言えば、「今期は赤字すれすれだから、接待交際費を計上するのは辞めておく」ということだってできる。

決算書は、誰がやっても同じ結果が出るような科学的なものではない。そこにはアートの要素が入り込む。
上手な税理士は、企業にとって有益な形の決算書をある程度「クリエイト」できる。

中小企業の決算書分析はあまり役に立たない

監査の入る大企業ならいざ知らず、中小企業の決算書をそのまま信頼すると、意思決定を間違ってしまう。
個人的には、中小企業の決算書を使って安定性分析などをしたところで、その企業の改善にはほとんど役に立たないと思っている。

数字は嘘はつかないが、数字の組みあわせ、どの数字を出して、どの数字を出さないかといった領域で作成者の意図が入り込むことを忘れてはならない。

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