「同業他社はどんな感じですか?」、コンサルの現場でよく聞かれる質問だ。
業界の平均値などの定量的なデータを提示することもあれば、
付き合いのある同業者や金融機関から聞いた定性的な情報を話すこともある。
平均値のわな
平均値と比較して、良い・悪いと自社をあまり責める必要はない。
平均値とひと言で言っても、データの中に一社でも桁外れの数値をたたき出す企業があれば、その平均値にあまり意味があるとは思えない。
年収500万円の人が9人、年収1億円の人が1人の会社があったとする。
年収の平均は(500万×9人+1億×1人)÷10=1450万円だけれど、それに何の意味があるだろう?
また、算術平均でなく、中央値や最頻値だったら、その意味は大きく変わる。
平均値はあくまで参考に留める
平均値は参考に留めるべきで、あまりその数値に囚われてはいけない。
売上高経常利益率や原価率・人件費率など、全ての指標を平均に合わせたとしよう。
そこに残るのは、何の特徴もない、同業他社と容易に交換可能な競争力のない中小企業だ。
平均値に合わせようとすれば何がおこるか
原価率が高い、人件費率が高い会社が、これは問題だと平均値までコスト削減を進めたらどうなるか?
その会社の強みであった商品の品質が失われるかもしれない。
強みであった従業員のロイヤリティが減失するかもしれない。
「俺のフレンチ」は、原価率が高いことで有名だ。
この会社は「同業他社よりも原価率が高いから」と原価率を下げようとすることはないだろう。
なぜなら、それこそが自社の強みの源泉だとわかっているからだ。
接待交際費の割合が高い会社がその費用を削減したら?
その会社の強みであった交際費で維持していた取引先との関係が失われ、受注が減るかもしれない。
もちろん、売上や利益に関係のない無駄な交際費は削ってよい。
それは「強み」とは関係のない経費だからだ。
強みとは、平均値から外れた「何か」
強みとは、同業他社の平均から大きく外れる、尖った「何か」を持つことに他ならない。
平均値を意識し、それに合わせていく行為は、自社の強みを消してしまうことに繋がる。
平均と比較するのなら、その前に自社の「強み」を明らかにしよう。
自社の売上げは何によってもたらされているのか。自社の利益は、どうやって創り出しているのか。
そして、強みを生み出している経費に関しては平均値なんて無視する。
それ以外の、強みに関係しない経費は、平均値に近づけていってもいいだろう。
全ての指標が平均値の会社は存在しない。
もしそんな会社があれば、競争に勝ち残れずに早々に潰れてしまうだろうから。