経営コンサルタント(中小企業診断士)なので、日々、経営者にいろいろな提案をしている。
以前こんなことがあった。
診断士合格者の実習講師をしていたとき。実習生が経営者にプレゼンをし、ある提案をした。
経営者(この方は某大企業出身でコンサル経験あり)はそれを聞いて、言った。
「君はこの案の他にどんな案を考えた?そしてその中からどうしてこの案を選んだの?」
実習生は答えることができなかった。他の案なんて検討していなかったからだ。
ぱっと直観で思いついた案を提案してはいけない。
様々な方向から検討を重ね、複数の案を出し、それぞれのメリットデメリットを検討する。
その上で、経営コンサルタントとしての矜持を持って、最適な案を選択し提案する。
この作業をしないのであれば、それは、提案ではなく単なる酒場での与太話だ。
複数の案を出すなら、必ずお勧めを提示する。
中には、複数の案をそのまま経営者にぶつける人もいる。
「案を五つ用意しました、好きなものをお選びください」というわけだ。
これもダメだ。経営者に判断を丸投げしてはいけない。
複数の案を提示するのは構わない。経営者だっていきなり一つの案を「これが答えだ」とばかりにぶつけられるより、コンサルタントがなぜその答えにたどり着いたか、思考プロセスを含めて知りたい人もいるだろう。
たとえ複数の案を提示する場合でも、経営コンサルタントとして必ず「お勧めの案」を提示しなければならない。
案を並べるだけならグーグルで検索すればだいたいのことはわかる。
大概の問題は、過去に頭のいい誰かが考えてくれているのだ。
経営コンサルタントに求められるのは、「御社の状況を考慮すればこの案が最適だ」という、カスタマイズされた提案だ。
もちろん、最終的な選択権は経営者にある。
コンサルがお勧めしていない案を選ぶ場合もあるだろう。その時はどうすればいい?
ここで経営者を「わからずや」と非難してはいけない。彼は人生を賭けてその案を選んだのだ。
経営コンサルタントは、その案で経営者が勝てるように全力でサポートするだけだ。