世界はフラットにならなかった

先日、商社の方と話をする機会があった。

商社や卸は無くならなかった

私が社会人になった頃は、
ネット(インターネットに代表されるIT技術)の発達によって中抜きが進み、
商社や卸といった会社は無くなるとまことしやかに語られていた。

あれから20年、商社はいまだに
日本のビジネス社会で大きな一角を占めている。
商社の方から、現代の商社が持つ機能についてお話を聴き、
それがなぜネットで代替できないかについてもよく理解できた。

管理職は消滅しなかった

管理職も同様に、ネットにより情報の流通に垣根が無くなり、
消滅すると言われていたものの一つだ。
しかし、管理職が居なくなったという話は聞かない。
大手IT企業やベンチャーでも、完全にフラットな組織というのにはついぞ出会ったことがない。

小規模企業ならあり得るかもしれないが。
たとえば当社は人数が少ないので明確な役職や職掌は存在しない。
しかし、おそらく社員数を10人を越えたあたりから「管理職」を作ることになるだろう。

橘玲著「人生は攻略できる」によれば、管理職はむしろ増えているそうだ。
理由は、仕事が複雑化しているから。

地域格差は埋まらなかった

ネットにより情報がどこでも入手できるから、場所は意味をなさない。
東京一極集中が是正され、地方が活性化する、とも言われた。
しかし、ほとんどの大企業は東京に本社を持ち、いい仕事はいまだに東京にある。
地方との情報格差は未だ埋まっていない。

世界はフラットにならなかった

どうやら、我々はネットに過度に期待しすぎたようだ。
世界は思ったよりもフラットにならなかった。
むしろ、従来にも増してスパイキー(一部分だけに集中する)状態になった、といったが現実に近い。

上に挙げたものにネットがまったく影響がなかった、という訳ではない。
商社の中には倒産したところもあるだろう。
管理職の割合や階層の数が減った会社もあるかもしれない。
ネットを活用して地方で質の高い仕事をしている企業もあるだろう。

ただ、何かが「完全に無くなってしまう」というような
極端な言説は信じてはいけないようだ。
技術の発展は急激だが、
社会の変化は緩やかになる。
人間の感情や既存の仕組みが変化に抵抗するし、
技術をそのまま社会に適用できるような単純な世界ではないのだろう。

さて、最近ではAIが社会を変え、
既存の職業のうち大半は無くなってしまう
という言説が盛んだ。

20年前、ネットが導く輝かしい未来予測を雑誌で読み、
羨望の目で眺め、そして今、大して変わらなかった世界を見た私は思う。

「それは本当なのか?影響は限定的で、ほとんどの事は以前と変わらないのでは?」と。

詐欺師や扇動家は必ず「これはいままでのものとは違う」と叫ぶものだ。

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