アジャストメント

SFの巨匠、フィリップ・K・ディックの短編で「アジャストメント」というタイトルのものがある。確か映画も作られた。
ネタバレにならないように最小限で話すと、世の中ではとある誰かの「調整(アジャストメント)」が行われているのに
それに誰も気づかない。偶然にも気づいてしまった主人公は・・・というストーリーだ。

世の中には固定されたものはなく、全てが移ろいゆく。諸行無常とはよく言ったものだ。
そんな中で何かを維持しようとすれば、小説のように誰かによる弛まない「調整」が必要になる。
組織だってそうだ。調節をひたすら繰り返すからこそ、安定しているようには見える。
実は常に動いているけれど、遠くから、長い目で見れば安定しているように見えるだけだ。
「うちは大丈夫だから」という安心が、調整を怠る。それがゆっくりと組織を蝕んでいき、
ある日、取り返しのつかないところにいることに気づく。

でもこの調整は周囲からは歓迎されない。「面倒くさい」「細かい」「大袈裟」「何もそこまで」と思われるからだ。
調整がうまくいっている間は、誰もその価値に気が付かない。
「あの人は色々細かいけど、あんなことしなくたって問題なかったよね」と言われ、嘲笑すらされる。
調整をしなかった未来は「来なかった」。それが調整者の努力によるものか、
それとも無駄な努力であって、何もしなくても結果は変わらなかったのかは、誰にもわからない。

で、結局のところ、偶然の力に頼らずに組織を維持しようと思えば、
誰かが「調整者」に、つまり「嫌われ者」になる必要がある。
小さい組織ならそれは社長か、ナンバーツーになる。

誰からも嫌われたくないのなら、人の上に立ってはいけない。

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