中小企業診断士を10年もやっていれば、
現実の理不尽さを嫌というほど見せつけられる。
本当に人が良い社長が経営していて、扱っている商品もすばらしいのに、まったく儲かっていない会社。
逆に、高級な外車と時計を所有し、売上もものすごいけれど、社長が暴君すぎて従業員が次々と辞めていく会社。
好調な業績だったのに、まったくの不可抗力で突如として資金繰りが詰まり倒産した企業。
思わぬ臨時収入で苦境を脱し、成長軌道にのった企業。
社員を篤く遇したにもかかわらず、その社員に裏切られ顧客を引き抜き独立された社長。
社員の扱いは酷いが、謎のカリスマ性で忠誠心を維持している社長。
「因果応報」や「天網恢々疎にして漏らさず」といった故事成語は皆の希望であって、現実社会にはまったくあてはまらない。
そこに法則があるとすれば、「法則なんてない」という法則だけだろう。
世のなかに流布している「できる社長の法則」なんてのは、どこまでいっても
「業界、取引先、従業員、景気、地域など特定の条件下で上手くいく確率の高い法則」でしかない。
もし成功の法則を教えるという人が近づいてきたら、その人は詐欺師か頭の弱い人のどちらかだ。
因果応報は、ただ突っ立っていても起きない。
仕事をしていて、因果を感じることはあるが、それはほぼ偶然に過ぎない。
すべてが偶然であるならば、打ち手を増やし、偶然に上手くいく確率を上げるしかない。
現実社会では、フットワークが軽いことこそが勝つための条件だと思う。
私も年齢のせいか、企業としての図体がすこしずつでかくなってきたせいか、最近フットワークが悪いように思う。反省している。