前回の続き。
4)ボトルネックの能力を高める
最後に、ボトルネックの能力を高める活動を行う。
システムやパソコンなどの新たな設備投資、人員の増強といった費用のかかる作業はこの段階で初めて実施する。
また、可能であれば作業(3)の一部を、比較的余裕のある作業(4)で引き取ってもらうといった業務分担の見直しも効果的だ。
5)制約条件が解消されたら1)に戻って、次のボトルネックを探す
手順4)によって作業(3)の処理量が9件/日に向上したとしよう。
システム全体の処理量はどうなるだろうか?
手順1)に戻って考えると、このシステムのボトルネックは作業(4)(8件/日)に移行していることがわかる。
「集中の5段階」に従い、新たなボトルネックである作業(4)の改善を進めていこう。
制約条件でないものを改善するのは無駄である
以上が制約理論(TOC)のごくごく簡単な説明である。
こうやって書くと「当たり前のことじゃないか」と思われるかもしれないが、
人は案外、目の前のことだけを見て場当たり的な対策をとってしまいがちなものである。
作業(1)の担当者は、基本、作業(1)のことしか考えない。
Z社の仕組みのなかで作業(1)の能力をどれだけ向上させても、会社全体の処理量はまったく上昇しないのにもかかわらず。
そういう意味では、システム全体を俯瞰できるのは社長だけだろう。
特に規模の小さい中小企業ならなおさらだ。社長みずからが、制約理論を活用して改善を進めるべきだろう。
もっとも、「社長が一番の制約条件」と社員がぼやく会社の問題は、制約理論ではどうにも改善できないのだが。
参考文献:「ザ・ゴール」エリヤフ・ゴールドラット著/「図解ポケット ゴールドラットの制約理論がよくわかる本」中野明著