2002年、デビッド・ボウイはミュージシャンたちに、
これまでとはまったく違う未来が待ち受けていると警告した。
「音楽そのものは、水道や電気のようなものになるだろう」
とボウイは言った。
「ツアーをたくさんする覚悟をしておいた方がいい。
それだけが残ることになるだろうから」。50 いまの経済をつくったモノ / ティム・ハーフォード著
デヴィッド・ボウイは若いミュージシャンへの警告として
この言葉を発したのだろう。でも、これは私のような士業にも
同じ事が言えると思う。
情報は簡単に手に入る、無料で
ネットで検索すれば、情報は簡単に手に入る。
従来は専門家でなければ理解できなかったような複雑な概念も、
誰かがネット上でわかりやすく解説してくれている、しかも無料で。
本という情報がまとまった媒体の価値はまだあると思うし、
著者になる、ということがマーケティング上プラスの効果を生むのもわかる。
ただその価値は昔ほどではないように思う。
「情報はフリーになりたがる(information wants to be free)」と1984年に言ったのはスチュアート・ブランドで、もう35年以上前の話だ。
ここで言うフリーは自由、無料、どちらの意味にも解釈できる。
それでも情報を入手する、解釈する時間がない、面倒だ、という層はいるので、士業の価値はそこに残ると思う。
現在および未来の士業全員を食べさせるほどのボリュームがそこにあるのかどうかはわからないけれど。
状況を考慮した提案ができるように
ミュージシャンなら、CDなどの販売で利益を得ることはあきらめ、ツアーをたくさん行いビジネスを成り立たせることができる。
ただ、それができるだけの人気があるミュージシャンは限られるだろう。
士業における「ツアー」とは?セミナーであり、個別のコンサルティングであると考える。
ネットに無料の情報が落ちているとは言え、専門家からみれば「それはさすがに物事を単純化しすぎだろう」と嘆息するようなものもままある。
複雑なテーマになれば、ネットの最大公約数的な情報を鵜呑みにするのはむしろ危険ですらある。
ひとりひとり異なる状況を踏まえた上で、最適な提案を行うこと。
教科書に書いてあるようなことを暗誦するだけの士業は、不要になる。
音楽そのもの、つまり情報は無料になるかもしれないけれど、
ツアーでのMCやライブバージョンの曲を演奏すること、つまり情報を取捨選択しオーダーメイドで加工、即興で提案を行うその技術は、
きっと無料にはならないだろう。