真っ白なカレンダー

10年以上昔の話になる。私が独立してまだ数年くらいしか経っていない頃。
同じくらいの時期に独立した中小企業診断士がいた。年齢も近い。

いつも忙しいと言っていた。予定を合わせようとしてもなかなか難しい。
当時それほど仕事はなく、カレンダーがスカスカだった自分は、
独立わずか数年でカレンダーが埋まってしまう彼のことを羨ましく思っていた。

ある日、彼と同席した打ち合わせで、次回の日程を決める運びとなった。
いつものように彼は手帳(当時スマホはそれほど普及していなかった)を広げて、
「あまり空きがないが、*日と*日ならいける」と、申し訳なさそうに言う。

私は近くの席に座っていたので、ついつい彼の手帳を覗き込んでしまった。
私の視界に入ったのは、ほぼ白紙のカレンダーだった。

忙しいふりをする、と言うのは、セルフブランディングの手法としてはありきたりではある。
「そんなに忙しいのなら、きっと有能に違いない」と言うシグナルを周囲に出すことができる。

それからは私も「いつでも大丈夫です!」とは言わずに、*日と*日「なら」大丈夫です、と相手に伝えるようになった。
スカスカだったカレンダーは、いつしか休みも取れないほどに埋まり、本当の意味で「あまり空きがなく」なってきた。

彼にその時の話はしていない。
いつか老人になって、一緒に飲みに行く機会でもあれば、感謝の言葉を伝えたいと思う。

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