無駄なことを全力でやっても徒労に終わるわけで、何をやるにせよ「効果があるのか」を事前に検討すべきだろう。
そこで、効率化のための方法論である「制約理論」について簡単に説明したいと思う。
制約理論とは
制約理論とは、Theory of Constraintsの日本語訳であり、TOCと略される。
この理論を提唱したのはイスラエル人の博士、エリヤフ・ゴールドラットであり、TOC理論をわかりやすくかつ面白く説明した小説「ザ・ゴール」の作者として有名だ。
「制約」理論なわけだから、制約(制限)が重要なテーマとなる。
制約は「ボトルネック」とも言い換えられる。ボトルネックはビール瓶などが細くなる部分のことであり、
転じて全体の流れを滞らせる箇所のことを指すようになった。
日本ではさらに省略されて「ネック」と呼ばれることもある。
日常の会話で「あの人がネックなんだよね・・」といった使い方をした経験のある方もいるだろう。
ボトルネックについてもう少し説明すると、これらは「システムのなかで最も弱い部分」だと言える。
ここでいうシステムとは、一連の業務の流れである。
金属の輪が連なったチェーンを想像して欲しい。
チェーンを両側から引っ張った時、壊れるのは金属の輪のなかでもっとも弱い箇所だ。
この「最も弱い金属の輪」がボトルネックだ。
TOCでは、ボトルネックの箇所がシステム全体の能力を決定づけると考え、ボトルネックの改善を継続的に実施することを目指す。
ちなみにゴールドラット博士はトヨタ生産方式に大きな影響を受けたようで、TOCの概念にはトヨタ生産方式に通じるものも見られ、日本人にも馴染みやすいだろう。
ボトルネックの例
たとえば、ここにZ社という企業があり、事務処理業務を行っているとしよう。
担当が4人おり、それぞれ別の業務を行っている。
担当毎に熟練度に違いがあるし、業務内容の難しさも異なるので、1日あたりの作業量はまちまちだ。
この場合のボトルネックはどこだろう?
結論を言うと、一日あたりの処理量が5件ともっとも少ない、担当C氏が行っている作業(3)が「ボトルネック」だ。
A氏やB氏がいくら仕事をこなしても、C氏の作業が進まず、作業(2)と作業(3)の間に書類が溜まっていくだけだ。
D氏が担当の作業(4)も、C氏から渡される処理済みの書類の数が少なく、すぐに処理が終わって暇を持てあましてしまう。
もちろん、現実の仕事では時間が空いたら他の作業をすればいいのだけれど、ここでは説明のために業務を極端に単純化して説明している。
それでは、この業務をTOCの考え方を用いて改善していこう。(つづく)