時給で計算する勿れ

「時給換算で」と言う言葉をよく聞く。自営業ならもちろん、「今自分のしている仕事は時給いくらか」を考えて行動することはとても大事だ。
ただ、それだけで自分の行動を決めていると、チャンスを失ってしまう。

中小企業診断士は公的機関から仕事をいただける。報酬は民間よりも安い、当たり前だ。
公的機関が営業活動を代行してくれ、お客さんを目の前に連れてきてくれる。その手数料を引かれた後の金額だと思えば十分に高いと思っていた。
ただ、額面で考えると安い。準備やその後のフォローまで考えると、時給換算でさらに安価になる。
「これではやってられない」と、そういった公的機関からの仕事を一切受けない、と言う診断士もいる。

私は独立当初、そんなことは言ってられなかった。何せ仕事がないのだ。時給ゼロ円と比べたら、どんな仕事だってありがたい。
そうこうしているうちに民間の仕事も増えた。人も雇った。今、公的機関の報酬水準で仕事をしたら、社員の給料すら払えない。
でも相変わらず、公的機関が依頼があれば、時間の許す限り極力仕事を受けるようにしている。なぜか?

長い目で見たら時給換算でも十分にペイすることを知っているからだ。
公的機関の仕事をしていると、別の仕事が舞い込んでくる。予算が取れたからと、時折大きな仕事を依頼していただけることもある。
また、公的機関の職員も気を遣ってくれて「ここからは民間同士の契約でどうぞ」と案内してくれることもある。
セミナーをすれば、そこから個別に依頼が舞い込むこともある。

その仕事だけを見れば「マクドナルドで働いた方がマシ」だとしても(そこまで安い仕事は来ないけれど)、
数年のスパンで「時給換算」すれば、そんなことはまったくなかった。

時給換算も、時間軸をどう考えるかでその結果は変わってくる。
近視眼的な選択をすれば、長期的な利益を逃がしてしまう。

同業者で、「俺はそんな小さな仕事はしない」と放言していた人がいた。
今その人を見ることはない。ネットからも姿が消え、SNSの更新も止まっていた。
彼はきっと、いきなり大きな仕事を得ようとして、小さな仕事すら得られなかったのだろう。

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