中小企業診断士の独立。公的機関と一緒に成長する

中小企業診断士は他士業と比較すると「独立しやすい」士業だといえる。

公的業務の存在

なぜかというと、公的機関から仕事をいただけるからだ。

中小企業診断士の資格を取り独立したら、まずは地域の商工会や商工会議所、
団体中央会、国や都道府県、市町村の中小企業支援の関わる部署に挨拶に行こう。

タイミングが合えば、相談員や嘱託指導員などの定期的な仕事やセミナー講師といった不定期の仕事の依頼が来る。

税理士や行政書士だとそうはいかない。民間企業のクライアントをゼロから開拓することと比較したら、公的な仕事が一定数存在する中小企業診断士は独立後も当初から安定した収入を確保しやすいと言える。

ものづくり補助金のコーディネーター

たとえば、ものづくり補助金のコーディネーター。
ものづくり補助金に採択されると、企業毎に担当(コーディネーター)が一人付き、
申請に関するサポートをしてくれる。

彼らのほとんどは中小企業診断士であり、日当いくらで雇われている。
#企業のなかには彼らを県の職員だと勘違いしている人も居るが、違う。

安定した収入が得られるし、ものづくり補助金に採択されるようなレベルの高い中小企業とも話ができる。
(コーディネーターの立場を利用して自分のサービスを売り込むのは反則です)

公的機関の嘱託専門員

商工会や商工会議所、中央会や中小機構の嘱託職員になるという手もある。
これらの団体には中小企業支援の部署があり、そこの職員と一緒に動くことになる。
中小企業からの依頼を受けて、いろいろなテーマのコンサルティングができる。

予算の制約があるため一企業に訪問できる回数に制限はあるものの、
これだけでも食べていけるだけの収入は稼げる。

月に何回、と出社義務があるのが嘱託で、
依頼があればそのときだけ行くのが専門家派遣だ。
地域や組織によって呼び名は異なるので注意。

これら公的機関と動く時の注意事項は、中小企業の経営者だけでなく、
公的機関も満足させるような提案を行うこと。
両者のニーズは時に異なることがあるので、落としどころを見つけるのも必要なスキルとなる。

#どちらのニーズしか考慮しない行動ばかり取れば、その公的機関からは仕事が来なくなるだろう。

中小企業診断士協会から仕事をいただく

中小企業診断協会から仕事をもらえることもある。
福岡県協会の場合、協会として仕事を受託した場合、その担当をする診断士の公募がかかる。
手を挙げれば、委員会による審査ののち、担当を任せられることもある。もちろん報酬もいただける。

佐賀県協会なども積極的に仕事を受注しているようだ。
このあたりの方針は県毎に異なると思われる。

デメリット

独立した中小企業診断士にとって、もっとも重要な能力。
それは知識でも技術でも論理思考でもない、営業力だ。
もっと卑近な言葉でいえば、「相手の財布を開かせる能力」、これに尽きる。

公的機関に依存してしまうと、この能力を鍛えることができない。
お客は公的機関が連れてきてくれる、報酬は国や自治体の予算から支払われる。
そしていつのまにか、お客から金を取ることができなくなってしまう。

私は営業職の経験がなく、ずっと技術畑を歩んできた人間だったので、
独立当初は営業力は皆無だった。いろいろと苦労と遠回りを繰り返して、いまはなんとかましになった。
もし私が公的機関での仕事ばかりを続けていたら、この能力は身につかなかっただろう。

公的機関をうまく活用する。しかし恩は忘れてはいけない

公的機関は自分が民間の仕事で喰っていくまで、集客と集金の部分をサポートしてくれるありがたい存在として考えよう。
もちろん、もらってばっかりではダメだ、それではいずれ仕事がこなくなる。
あくまで自分の専門知識を提供して、その見返りで公的機関も恩恵を得る、、という、Win-Winの関係が基本だ。

公的機関の安定した仕事でベースラインの収入を確保しつつ、
自分の事業を育てていく、という観点を忘れずに営業活動に勤しむ。

当たり前だが、民間の方が報酬水準は高い。
そうでないなら、それはその診断士の料金設定が間違っている。
公的機関はどうしても報酬の上限があるので、ある程度以上には売上を伸ばすことはできない。
自らの事業が成長すれば、いずれ公的機関からの仕事を受ける暇はなくなっていくだろう。

最初の数年は公的機関の仕事を行いながら力を蓄え、
どこかのタイミングで大きく「ジャンプ」するというイメージだ。

(金額や年度は適当です)

自分はまさにこのようなルートを辿り事業を大きくしてきた。

もちろんだが、自分がまだビギナーで、信用もなにもなかった時期の私に仕事を与えてくれ、公的機関に「育ててもらった」恩を忘れてはいけない。
当社は既に民間の仕事が90%を超えているが、過去の恩を感じている公的機関や担当者からの依頼は採算度外視で引き受けている。

ずっと公的機関と関わるという選択肢

これとは別に、公的機関で長く働く、という選択肢もある。
日当や時給による安定した収入と、勤務日数の少なさ・時間の融通が効くことによる自由な生活が手に入る。
前述のようにもらえる報酬には上限があるため、自ずと年収は決まってくるが、別にお金を稼ぐだけが幸せではないだろう。


いずれにせよ、これらの仕事が用意されているのは、士業広しといえど中小企業診断士くらいなものではないだろうか。
中小企業診断士はよく「取っても喰えない」資格だと揶揄されるが、それは発言者がただ資格を活用できていないことの言い訳でしかない。

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