前回、社会的手抜きについての説明を行った。
逆の現象、「社会的促進」
社会的手抜きとは逆に、集団で作業をすることで却って全体のパフォーマンスが高まることがある。
「社会的促進」と言われている。
社会的手抜きよりも社会的促進の方が企業や組織にとって望ましいのは言うまでもない。
社会的促進を発生させる、つまり、社会的手抜きを防止するための項目は下記の通りである。
- 仕事内容の重要性が高く、かつ同僚の能力が適度に低い
- 一緒に仕事をしているメンバーから当面逃れられない
- 仕事を始めた初期に現れやすい
- 集団のサイズが小さい
- 常に手抜きをする人は、集団から外す
仕事の内容の重要性が高ければ、社会的手抜きは発生しなくなる。
誰でも、自分がやっている仕事が重要だったり顧客から大きな期待をかけられていると感じればやる気が高まるだろう。
ポイントは、仕事が重要であるだけでなく、同時に「同僚の能力が低い」場合に社会的促進が発生するということだ。
能力の低い同僚をサポートしようとして、他のメンバーが100%以上の力を発揮することがある。
また、能力の低いメンバーも周囲に迷惑をかけたくないという思いから実力以上の力を発揮することがある。(ケーラー効果と呼ばれる)
社会的手抜きと社会的促進の分かれ目は、「能力差」にある。
メンバー間の能力があまりにかけ離れていると、社会的手抜きが発生する。
能力の差が少なければ、努力で埋めることが可能と考え、ケーラー効果が発生し社会的促進となる。
仕事でグループ作業をさせる際は、なるべく能力差の少ないメンバー構成とした方がいいだろう。
同じメンバーでの仕事が一日限りであれば、一日だけ我慢すればいいと思い、社会的手抜きが発生する。
このメンバーでしばらく仕事しなければならないとすれば、自分が頑張ったり仕組みを作るなどで事態を改善しようとするだろう。
ただし、その努力が適切に評価されないまま時間が経過すれば、「やってもムダ」という思いから社会的手抜きに移行していく。
仕事を始めた初期には社会的促進が現れやすい。
誰が手抜きしているのかよくわからないからだ。
時間が経過し、常に手抜きをしている人がいることが明らかになれば、頑張るだけバカを見る、という考え方になっていく。
集団のサイズは小さいほど、社会的促進が生まれやすい(逆に言えば、社会的手抜きが発生しにくい)。
組織が大きくなってきたら、適切な部署なりグループに分割することが望ましい。
そうはいっても、ひねくれた性格なのか常に手抜きをする人間は存在する。
こういった方が集団にいると、集団の他のメンバーにまで悪影響を及ぼすため、集団から外した上で、手抜きのできない、例えば個人の成果が明確にわかってしまうような仕事をさせるのが正解だ。
罰の効果
社会的手抜きが起きる原因とその解決方法について書いた。
社会的手抜きという言葉は知らなかったにせよ、その内容には読者にも思い当たるフシはあったのではないだろうか。
ちなみに、社会的手抜きを辞めさせるために「罰」を与える方法については効果が薄いようだ。
罰は、受け手の不安や無力感、復讐心や怨念といったネガティブな気持ちを呼び起こし、短期的には改善が見られても、中長期的には良い結果をもたらさない。
社会的促進が発生しやすいように職場や組織を設計すれば、働きやすい環境が実現するだろう。
業績だって、きっと上がるはずだ。