最も怖いもの

帝国データバンクから週2回ほど届く「TDB帝国ニュース」、私も月2回ほど連載を持たせてもらっている。
補助金の話と心理学や生産性のコラムなど硬軟取り混ぜて寄稿している、今のところ好評のようだ。
この冊子を読んでくれた方にとって、私のかいた文章が少しでも役に立ってくれれば嬉しい。

TDB帝国ニュースには、「倒産・動向記事」という欄がある。
ここには地域の倒産に関する情報が掲載されている。

経営者が最も恐れるのは、この「倒産」という2文字だろう。
この欄を読むと、経営者一人一人がたどった数奇な運命に想いを馳せて、しんみりしてしまう。
かつて働いていたコンサル会社の名前を見つけて驚いたことがあった。
以前経営支援をさせていただいた企業が倒産したことをこの記事で初めて知った。

いつだって、他人事とは思えない。
私の会社は、独立して13年何とかやれては来たものの、振り返れば危険なシーンはいくつもあった。
それは過去のことだと安心してもいられない。
大口取引先の消失、政府の方針の変更、経営者の病気、幹部の離反、投資の失敗、天災・・・
中小企業なんて、ちょっとした環境変化ですぐに行き詰まってしまう。

そのことを考え出すと怖い。
取引先や従業員に頭を下げて約束が履行できないことを伝え、毎日お金のことしか考えられず、プライドも誠実さもかなぐり捨てて目先のことだけしか考えられない自分。
ただ考えるだけで、体の奥から冷えていくのを感じる、恐怖で考えがまとまらなくなる。

だからと言って自宅の部屋で体操座りでずっと日々を過ごすわけにもいかない(そうできるならそうしたいけれど)。
外に出て、取引先と話し、従業員に指示を出し、モチベートし、資金を管理し、投資を決定し、現場で仕事をしなければいけない。

規模に関わらず、社長というのはそういった恐怖と闘いながら日々を過ごしている。
どんなに仲の良い従業員でも、家族でも、友人でも、その恐怖を本当の意味で理解することは、できない。

恐怖に負けたら会社は潰れる。恐怖から目を背けても、やはり会社は潰れる。
恐怖を飼い慣らして、うまく付き合いつつ、なんとかやっていくしかないのだ。

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