もう10年以上前の話になる。私が中小企業診断士として独立して日が浅いころ。
自治体の経営相談窓口を担当していたことがある。
無料なので敷居は低い。業種は限定していない。
持ち込まれる相談はさまざまで、IT、販促、人事、法律、マネジメント、創業、なんでもござれだった。
しかも予約もないため、挨拶をして話を切り出すまで、相手がどんな業種でどんな悩みを持っているのかも全くわからない状態からのスタート。
相手は私に専門家(中小企業診断士)としての回答を期待している。
毎回頭をフル回転させて、少しでも価値のある回答をしようとしていたのを覚えている。
相手の質問に対して、ニーズを踏まえ自分の知識を動員し、即座に回答する技術。
わからないとしても、隣接範囲から事例を引っ張ってきたり、一般的な回答をし相手の満足度を高める技術。
あの時ほど自分が読書家でよかったと思ったことはない。
今はもうやっていないけれど、あの仕事で「瞬発力」が鍛えられた気がする。
この時に得た技術は今も役に立っている。
ここ数年、電話でクライアントの事業計画についてヒアリングする機会が多かった(今は社員が成長したので、彼らにやってもらっている)。
その業界で何十年も働いている社長から「あんた、結構詳しいね」と評価をいただくことが、何よりも嬉しい。
その評価を支えている一つが「瞬発力」ではないかと思っている。
いくら知識があったとしても、すぐに対応できなければその価値は減衰してしまう。
不完全でも、中途半端でも、すぐに対応することが重要な時もある。