社長なんて偉くも何ともない。
課長、部長、包丁、盲腸と同じだ。
要するに命令系統をはっきりさせる記号に過ぎない。
ー 本田宗一郎
社長は偉いわけではない。社員よりも人格的に優れているわけでもない。
会社組織の構造上、最終の意思決定を行う主体と、その決定に責任を負う主体が必要だから、その役職があるだけだ。
とはいえ社長の決定一つで、従業員が路頭に迷うことすらあるのは事実だ。
以前は「会社を発展させて、社員の人生を守る」と、真面目に考えていた。
あるとき、私なんかよりもっと成功している社長がこう言うのを聞いた。
「もし会社が潰れそうになったら、社員はすぐに転職して、新しい職場で何事もなかったかのように働くだろうよ。
個人資産を取り崩してまで給料を払い、会社をギリギリまで守ろうとした社長のことなんか忘れてね。
みんな日々の生活があるんだ。だから、社員の人生に(そこまで)責任を感じる必要はないよ」
ちなみに、その会社で働く従業員の待遇は、当社よりもはるかによい。
「社員の人生を守る」というのも、経営者の驕りでしかないのだろう。
自社よりももっといい会社はいっぱいあるし、もっといい社長もたくさんいる。
そちらに転職した方が社員の人生はより良いものになるかもしれない。
あまり気負わず、肩の力を抜いて経営した方が上手くいくのだろう。
社長という「記号」に、過剰な意味を持たせすぎていたのかもしれない。