紀州藩の藩祖、徳川頼宣のエピソードらしい。
頼信が小舟に乗って、若者たちの泳ぐの見ていると、一人が溺れ始めた。
舟の上にいた頼信の付き人が、
「苦しかったら、早く舟にすがれ」
といったのを、頼信が訂正し、
「そういう言い方をするものではない。それでは、若者を殺すことになるぞ。
同じ言うなら、『舟にすがってひと休みしろ』というのだ。
「苦しかったら**しろ」と言われ、従えば、自分が苦しんでいることを認めることになる。
それはプライドが許さない。結果、差し伸べた手を拒否し、状況はますます悪くなってしまう。
「問題があれば相談してくれ」と、私はよく言う。
しかしそれも前述のエピソードと同じで、こちらが望んだ効果を出せてないのかもしれない。
問題があれば相談してくれ、の裏返しは、相談がないのなら問題はない、だ。
そう考えれば(管理者としては)ラクに違いない。でも、たぶん違う。
そこには、問題があっても相談できない人、そもそもそれが問題なのかどうかわからない人のことが抜け落ちてしまっているように思う。