報酬をもらうなら、便益が発生した瞬間に、ということがわかる小話。
昔話だが、ある大金持ちが重い病気にかかりほとんど助かる見込みがなくなった。
そこで金に糸目をつけず遠方から名医を迎え治療を頼んだ。
その甲斐あって病気はどんどん快方に向かい、あと数日で床上げできるところまできた。金持ちは番頭を呼び「金を五千両包んで医者にお礼してもらいたい」と言うと、
番頭は「五千両は多すぎます。そんなにあげる必要はありませんし、そんなに急ぐ必要もないでしょう」と答えた。すると金持ちは、「回復の見込みがないと言われた時は、病気が治るなら全財産を投げ出してもいいと思った。
医者が来て回復の見込みが出ると十万両出そうと思ったが、翌日またよくなると七万両でよいだろうと思い、
病気がよくなるに連れて医者へのお礼の金額がどんどん少なくなってきた。
もし全快すれば五千両はおろか百両でもどうかと思うだろう。そうなってはいけないので今お礼がしたいのだ」と言った。新渡戸 稲造. 逆境を越えてゆく者へ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.955-959). Kindle 版.
人間は現金なものだ。何か、問題が改善されれば最初は喜ぶ。
だが、時間が経つに従い、感謝の思いは薄れ、「他社はもっと安い」とか「サービスのここが不満だ(だから安くしろ)」とか「これくらい、やろうと思えば自分でもできた」と、ケチを付け出す。
そうならないうちに、報酬を請求した方がいい。