ピークエンドの法則〜重要なのは「頂点」と「終わり間際」

ピークエンドの法則とは、「われわれは自分自身の過去の経験を、そのピーク(最高潮)時にどうだったかと、それがどう終わったか(終了間際)の印象だけでほぼ判断している」、という法則である。
ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンが90年代に行った実験結果から提唱した。

実験の内容はこうだ。
被験者は、冷たい水に両手をつける。
右手と左手それぞれべつの水槽なのだが、両方とも徐々に温度が下がっていき、3分後にはかなりの冷たさになる。
その後、温度は下がっていく。
右手は8分で水から出してよい。
左手は、さらに4分間水につけて合計12分間になるが、最後の4分は冷たさが緩和される。(図1)

この実験の話を事前に説明した上で、左右どちらの手がより「不快」かを聞くと、大抵の人が「同じ」と答える。
最も冷たいときの温度(ピーク、最高潮)はどちらも一緒だからだ。
しかし、実験を行ったあとで感想を聞くと、ほとんどの人が「左手の方が楽だった」と回答する。
左手は右手より4分間長く冷水につけているので、不快な体験の総量で言うと右手より大きいはずなのに、最後の4分間(エンド、終了間際)の印象(あまり冷たくない)に引きずられて、右手よりも不快ではなかったと判断してしまうのだ。
図1:ピークエンドの法則
ピークエンドの法則を示す図表

この実験では、終了時間を伸ばしつつ終了間際の不快指数を減らすという作業を行った。(ピークエンドの法則における「エンド」の証明)

これが、終了時間も同じ、終了間際の不快指数も同じ、ただ、最高潮となる部分での不快指数に変化を持たせれば、より不快な方が印象に残ることがわかるだろう。(ピークエンドの法則における「ピーク」の証明)

日常生活への活かし方

人間の記憶というものはかなり当てにならない。
「おれの記憶に間違いはない」「この目で見たのだから信頼できる」といった発言の多い仕事仲間には気をつけよう。彼は、実験の結果当てにならないと証明されたものを根拠に発言しているのだから。

仕事において、議事録や会議メモといった文章が必ず必要なのは、会議の参加メンバーの記憶だけに頼って仕事を進めると、必ずといっていいほど「言った、言わない」の水掛け論が発生するからだ。

過去の記事でも話題にしていたが、パソコンやスマートフォン、メモ帳等を活用して、物事をできる限り記録しよう。「記録」が100%信頼できるとは言わないが、「記憶」よりもましなのは事実だ。

逆に、人間の記憶のあいまいさを逆手に取ることもできる。
ピークエンドの法則によれば、人間の記憶に影響を与えるのは「最高潮」と「終了間際」の印象なのであるから、第一印象で悪いイメージを与えても、打ち合わせの最高潮(クライマックス)や、最後で巻き返しは可能だということだ。

「終わりよければ全てよし」とは、よく言ったものだ。

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