積小為大

かなり昔の話になる。何かの会合で同業者に会った。
彼は独立したばかりだったけれど、「規模の小さい仕事、報酬の少ない仕事はしない」と断言していた。

そのころ自分は、専門家派遣やセミナー講師など、彼が忌避するような「小さい・少ない」仕事ばかりをしていたので、そう断言でき、その姿勢でも食べていける彼のことをうらやましいなと思っていた。
彼はきっと、少ない労働時間で、時給換算するととんでもない価格の仕事だけをしているのだろうと。

積小為大

私にはそんな能力も人脈もなかったので、その後も変わらず、依頼があればどんな仕事でも請け負っていた。
クライアントの規模はまったく気にせず、報酬の高い安いも気にせず、目の前の仕事を片付けていった。

するといつの間にか、わずかずつではあるものの単価の高い仕事が舞い込んでくるようになった。
なかには、以前であれば1年分の売上に相当するような大きな仕事もあった。
チームを組む相手も、1部上場企業や業界トップ企業が増えてきた。

ある程度は戦略的にそうなるよう行動していたが、一番大きな要因は「運」だ。
ただ、そういった話が「なぜ」私にやってきたのかというと、「小さい・少ない」仕事を地道に積み重ねて、そのことをブログなりセミナーでアピールしてきた結果だと思っている。

二宮尊徳の言葉といわれる「積小為大(せきしょういだい)」。
意味は漢字から予想されるそのままで、小さいことを積み重ねることで大きなことを為すことができる、だ。

自分はいきなり大きなことをしようとせず、何年もかけて小さなことを積み重ねてきて、今に到っている。

うらやましかった彼のその後

先日、あるきっかけから、以前私に「小さい仕事はしない」と言っていたその同業者のSNSを見る機会があった。
ホームページは閉鎖されており閲覧できず、経営していた会社の社名はプロフィールから消え、これでもかと書かれていた各種所属団体の名称も全て削除され、とある経営者団体の事務局スタッフを務めているようだった。
大きなことだけをしようとした結果、小さなことしかできなくなってしまったようだ。

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