もしも、私たちがみんな、
魔法によってお互いの考えを読み取る力を与えられたとしたら、
その最初の効果は、ほとんどすべての友情は解消されると
いうことだと思われる。ラッセル「幸福論」第八章 被害妄想より
「わかり合いたい」と思ってはいるが、本当に分かり合えたらどうなるだろうか?
機動戦士ガンダムの「ニュータイプ」と呼ばれる一種の超能力者がまさにそうだが、悲劇を生むことになるだろう。
人が本当のところどう思っているのかを知りたい。
知ることができれば、相手を傷つけることもないだろう。
その人が本当に望むことをしてあげられるだろう。
でも、その人自身にすら、自分の感情をきちんと把握できているか怪しいと思う。
その日の体調や、言葉の順番、天候などの影響で変わってしまうかも知れない。
人間の一貫性なんて当てにならないものだ。
冒頭の引用のように「お互いの考えを読み取る力」を与えられたら、
その考えがコロコロ変わることに驚き呆れ、
そんな一貫性のない思考に付き合うことを放棄し、
「読み取る力」のスイッチをオフにしてしまうと思う。
友情は壊れないけれど、人間に関する信頼が全面的に壊れるかもしれない。