売上は、減らせない。

佰食屋と言う京都の定食屋さんが一時期話題になっていた。
テレビにも出ていたし、書籍もある。ネットでもかなり話題になったと思う。
代表はいくつもの賞を受賞していたはずだ。

一日百食限定で、売り切ったら閉店。残業なし、休みもきちんと取れ、給与は百貨店並み。
外食産業の常識を覆すビジネスモデルであり、共感する人も多数いた。

私は、日経トップリーダーという雑誌に付属していたCDに収録された講演の音声でこのビジネスを知った。
講演を聞き終えた後、最初に考えたのは「これは持続可能なのだろうか?」という疑問だ。

持続可能とは思えない

賃上げはどうするのだろう?販売数の上限が決まっている(つまり、売上の上限が決まっている)中で従業員の待遇をあげようと思えば、
単価をあげる、食材原価を減らす、家賃など人件費被害のコストを減らす、もしくは、社員数を減らす、これしかない。

家賃や原価は外部要因で上昇する可能性がある。その上昇分を何と相殺するのか?単価を上げる?
一般に値上げする場合は販売数が減る可能性が高いのだが、一日百食売れない状態で会社を維持できるだろうか。

なかなか難しい。というより不可能じゃないだろうか。
「販売数を増やす」という方法を自ら封印しているのは、手足を縛った状態で経営しろと言われているようなもんだ。

従業員満足度は高いかもしれない。ただそれは、今現在の労働時間が少ないから。
このまま数年後も給料が上がらず、永遠に生活水準が上昇しない、いや、下がるかもしれないとしたら、その満足度は高いままなのだろうか。

内部留保は十分にあるのだろうか、今はブームで何もしなくても人が来るからいいけれど、そうでなくなった場合(それは高い可能性であり得る)、広告宣伝費が必要になるかもしれない。
その資金をどうやって捻出するのだろう。

売上は減らせない

と思っていたら、テレビでこの企業が「コロナの影響を受けて4店舗のうち2店舗を閉店、従業員も解雇」というニュースを見た。
経営者は泣きながら従業員に現状と解雇の必要性を説明していた。その辛い気持ちは同じ経営者としてよくわかる。私もつられて泣いてしまった。

コロナウィルスの所為だ、と言われればもちろんそうなのだが、
それが無かったとしても、ブームの終焉、米中の新冷戦による観光客の減少など、いずれ直面した課題だろう。

もし、仮に、百食の制限を無くして普通に商売をしていたらどうだっただろうか?
いや、150食限定でもいい。そうすれば、内部留保を貯めることができたのではないのか。
そうしたら、解雇せずともなんとか経営規模を維持することができ、コロナ収束後に愛する従業員とともに
事業を再開できたのではないだろうか。

もちろん、これが後付けの議論に過ぎないことは承知している。
どうすべきだったのかは私にはわからない、ただ、参考にして、自分の会社をどうしていくべきかを考える助けにはなる。

この経営者の著書のタイトルは「売上を、減らそう」だった。
私はこの言説に承服できない。売上は減らせない。

売上を減らすことを是とすれば、関わる人皆を不幸にしてしまうことを知っているからだ。
ワークライフバランスを重視した結果、ワークもライフを失う羽目になるぐらいなら、多少働きすぎた方がマシだ。

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