経験は最高の教師である。ただし、その授業料はとても高い。

子どもの頃。
本を読むのが好きな子どもだったので、よく大人から、
「本ばかり読んでると頭でっかちになるぞ、もっと外に出ていろいろな経験をしなさい」
と、注意されていた。

私は長崎県の離島(五島列島)で暮らしていた。
大人からの注意には、
「この田舎にどんな経験があるっていうんだ」
と答えて渋面をさせていた、かわいくないガキだった。
#いまでも実家に帰ると近所のおじさんから
#「お前は本当に腹の立つガキだった」と苦笑まじりに言われる。

経験の費用対効果

Experience is the best of schoolmaster, only the school-fees are heavy.
経験は最高の教師である。ただし、その授業料はとても高い。
ートマス・カーライル

体験してみてはじめて分かることもある。
肉体の動作や、習熟が必要なものは特に。
畳の上で泳ぐ練習をしても、海へ行けばほとんど役に立たない。

経験は重要、というのに異論はない。
問題なのは、トマス・カーライルが言うように
経験には「コスト(授業料)」がかかることだ。

コストはお金だけでなく、時間も含まれる。
たくさんの費用と時間を費やして、失敗という経験しか残らないこともある。

読書の費用対効果

いっぽう、読書はどうだろう。千数百円で買える本。授業料は安いと言えそうだ。

経験と比較すると「最高の教師」とは言えないだろう。
本を読むことは他者の疑似体験に過ぎない。

経験ほどの「効果」はないだろう。経験が100とすれば、読書は50もないかもしれない。
それでもコスト(時間と費用)の数字が、経験が100なら40で済むとする。

#あくまで説明のための数字なので割合は適当だ。

費用対効果はどうだろう?
経験は、100/100=1、
読書は、50/40=1.25。

費用対効果の観点で言えば、読書の方がパフォーマンスがいいのではないだろうか?

費用対効果を高めるには

経営コンサルタント(中小企業診断士)としていろいろな業界に関わる私は、
多岐にわたるクライアントの業界全ての業務を経験することはできない。
時間がいくらあっても足りない。

ならば、読書をうまく使うしかない。
費用対効果を高めるのであれば、効果を増やすか、費用を下げるか、だ。
よりたくさんの効果を得るためには読解力を鍛えねばならない。
より少ないコストで学習するためには、購入費用は減らせないので読書スピードを上げる。
そうすれば、経験にまさる「費用対効果」を得ることができるのではないか。

本を読むより外で経験を積みなさい、と説教をする人は、
効果にのみとらわれ、費用のことを考えていないのかもしれない。
子ども時代のひねくれた私にアドバイスしてくれた大人の顔を思い出しながら、そう考えた。

関連記事

  1. 携帯型ブックスタンドの活用(活字中毒の必需品)

  2. 活字の舟

  3. 良本の要約が読める雑誌「トップポイント」

  4. 読書で集中力を鍛える

  5. 書評「ストーリーとしての競争戦略:楠木健」

  6. 読書の効用(診断協会 福岡部会 部会報寄稿)

最近の記事

  1. 2024.05.14

    写真修行
  2. レール、分かれ道
  3. 2024.05.07

    穏やかなるGW
  4. 2024.04.26

    世間の評価

読書記録(ブクログ)