【書評】「AIで仕事がなくなる」論のウソーこの先15年の現実的な雇用シフト(海老原嗣生著)

本棚

面白すぎて一気に読んでしまった。

AIが仕事を奪うーといった言説は、
以前から「なんか怪しいな」と斜めに見ていた。

なまじIT業界に身を置いたことがあるのと、
現在は中小企業の支援を行っているという経験から、
現場を知らない人が理想論を語っているようにしか思えなかったからだ。

その疑問は、この本を読んで氷塊した。

AIが半分の仕事を奪う、いや9割奪う・・という主張の根拠は、
「技術的代替可能性」について「専門家」にヒアリングした、
主観的な結果をベースにしたものだったのだ。

そこには現場や実務の視点はまったくない。

この本では、雇用ジャーナリストの著者が、
AI研究者や事務・流通サービス・営業の第一線の方との対談を通して、
実務でAIがどれだけ使えるか?というのをヒアリングによる定性情報と
各種バックデータより丹念に分析している。

技術的には可能でも

技術的に可能ならAIが仕事を奪う・・というわけではない。
経営者としては、いくらAIが進歩しても
「人間を雇う方が費用対効果が良ければ」、
AIに置き換えることはない。

技術的には可能でも、費用対効果が優れなければ、
AI(ロボットもそうだ)に置き換わることがない。

中小企業のIT化(AIやロボットも同じだろう)が進まないのは、
規模の小ささとタスクの細かさ、多さから、
人間を雇った方が費用対効果が良いからで、
中小企業の社長が無知だから、というのが理由ではない。

#もちろんそれが勘違いである場合も多くて、
#私の仕事の一部はそれを改善することなのだが。

雇用の推移も絡めた、地に足のついたAI論

著者はAIの時代が来ない、とは言っていない。
「AIが人間に置き換わるのは、言われているよりも遅い」
という主張だ。

また、人口減、移民(正確には、技能実習生や留学生)、
産業構造の変化なども考慮しながら、向こう15年、AIが各業界に
どう組み込まれて、何が機械化され、何が残るのかを分析している。

週刊誌の記事を読んで、むやみやたらにAIに怯えるくらいなら、
この本を読んで、「AIを賢く使う」近い未来に備えた方が良い。

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