夏目漱石の小説「行人」に、こんなセリフがあるそうだ。
「にいさんのいわゆるものを所有するという言葉は、
畢竟ものに所有されるという意味ではありませんか。
だからものから所有されること、すなわち絶対にものを所有することになるだろうと思います。
神を信じないにいさんは、そこに至って始めて世の中に落ち着けるのでしょう」
私はものを所有している。たくさん。単純に好奇心旺盛で多趣味なだけだと自分では思っていたが、上記のセリフにあるように、「ものに所有されている」のかもしれない。
神を信じない私が、世の中に落ち着くために、ものを信じている。
神を信じている、と明確に言える現代人は少ないと思う。そうならば、誰もが、何かの「もの」、無形のものも含めた何かを信じているのだろう。いや、信仰しているといった方がいいかもしれない。仕事、金、家、家族、愛情、イデオロギー・・・・
会社の本棚に夏目漱石の全集を置いている。近代以降に日本人が抱えるようになった孤独や懊悩が彼の小説に詰まっていて、それは現代を生きる私たちにも当てはまると思っている。短編あたりから読み返してみよう。














