技術の進歩はいちじるしく、いろいろなツール(道具)が出てきている。特にIT分野で顕著だ。
バイオテクノロジー周辺の進歩もすごいけれど、こちらはあまり日常で意識する場面はない。いっぽう、IT分野は普段利用するスマートフォンの進化を見れば一目瞭然だ。
ツールありきで話が進む
何かの事業を始めるときに、「最新のツールありき」で話が進むことがある。
仮想通貨の技術を使って地域限定の通貨(地域通貨)を作ろう!というプロジェクトが某地方で持ち上がっているそうだ。
地域通貨の取り組みは、IT時代以前にもいろいろと行われ、研究結果も多数発表されている。仮想通貨の技術を使えば、新しい・面白いことができるのは事実だろう。
利用者は置き去りに
これが東京23区での実験、というのであれば、まったく問題ない。
しかし、その地方は高齢化率が高い。
若者は近隣の大都市に働きに出て戻らない、もしくは地元に住んでいても大都市の職場に通勤している、そんな人がほとんどだ。
地方の高齢者がスマホで仮想通貨を使って決済をするのだろうか?もしくは交通系ICカードのようにインフラを整備する?そのコストは?
正直、話を聴いた後に「それ、紙の商品券で同じ事できますよね」と思ってしまった。主要な利用者である高齢者も、スマホのアプリをインストールさせられるより、紙の商品券を配られた方が喜ぶのではないか。
話題になるのは事実だが、大事なのは利用者
仮想通貨を使った町興しという目新しさで、テレビなどのメディアに取り上げられ話題にはなるだろう。もしかしたら自治体の補助金による支援もあるかもしれない。
しかし、地域住民のためになるのかどうかは別だ。利用者のことを考えない事業は、きっと長続きしない。
ツールはあくまで手段であり、目的ではない。
「新しいツールを使いたい」という強い想いは、事業の成功を検討する視点を曇らせる。
だから、常に自分に問うことだ。
その最新ツールを使う、合理的な理由があるか?
従来からあるツールでもほぼ同じことが実現できるのではないか?