戦略を成功させるために必要な要素とは何だろう?
マーケティングの大家、フィリップ・コトラーの「プロフェッショナル・サービス・マーケティング」にはこう書かれている。
確固とした目標があるか、必要な技量を従業員が備えているか、従業員を励ますインセンティブがあるか、必要な資源を確保しているか、戦略実施のための作戦を網羅した明確な行動計画があるかといった点から、組織の受入体制を確認する。
図で書くと、下記の5項目、つまり「目標」「技量」「インセンティブ」「資源」「行動計画」が適切に準備されたときにはじめて「戦略」が成功するということのようだ。
出典:コトラーのプロフェッショナル・サービス・マーケティング/フィリップ・コトラー、トーマス・ヘイズ、ポール・ブルーム著
136p、137p図表を筆者がリライト。原典は”American Productivity and Quality”
目標がない場合>混乱
「目標」が抜けている場合から考えていく。目標がなければ、なぜこの戦略を実行しなければいけないのかがわからず、混乱を招く。組織のメンバーはてんでばらばらの方向に行き、収拾が付かなくなるだろう。
仮に目標があったとしても、それが明確でなく、いかようにも解釈できる曖昧なものであれば、ないのと同じだ。
技量がない場合>不安
「技量」が抜けている、というより不足している場合、組織のメンバーは「戦略は壮大だが、果たして今のわれわれの技量で実行できるのだろうか?」と不安を抱く。できないことをやれと言われれば、誰だってやる気を無くすだろう。
戦略を実行するための技量が不足しているのであれば、組織のメンバーに対して必要なトレーニングを実施するか、外部から技量を持った新メンバーを参加させることが必要だ。
身の丈に合わないことをしてはいけない。高い目標を達成するためには多少の背伸びは必要だが、無理をすると腰を痛めて二度と立てなくなるだろう。
インセンティブがない場合>緩やかな変化
「インセンティブ」、つまり組織のメンバーがこの戦略を実行する十分な動機を与えてあげなければ、日々の仕事が優先されるため戦略の実行は後回しになる。結果、変化は緩やかにしか起きない。
緩やかな変化で間に合えばいいのだが・・・・
インセンティブは金銭だけではない、組織内での評価、社会や組織への貢献といった様々なメニューを用意して組織の人員を鼓舞する必要がある。
資源がなければ、ジレンマに陥る
どんなによい戦略でも、それを実行するための「資源」(人やモノ、カネ、情報)がなければ、実行できずに歯がゆい思いをすることになる。
石油がなければ戦艦は動かない。戦略策定時点で自社がどのような経営資源を持っているかを明らかにしておかなければ、「アレがあればできるのに」という思いを抱えたまま不毛な仕事をする羽目に陥ってしまう。
行動計画がなければ、最初からつまづく
確固とした「行動計画」を策定し、組織のメンバーそれぞれに目指すべき方向を示さなければ、戦略の実行はおぼつかない。組織の誰が、何を、いつまでに実施するか、進捗管理は誰がどのタイミングで行うか、戦略と現実に齟齬が見え始めた場合の修正方法など・・行動計画がなければ、すばらしい戦略やビジネスモデルもただの「絵に描いた餅」でしかない。
まとめ
これら五項目が適切に準備できて初めて成功する戦略となる。上記では1項目が抜けているパターンを列挙したが、複数の項目、たとえば技量と資源が抜けており、いまの従業員と経営資源では不可能な戦略を策定している企業もあるだろう。
戦略、というと大げさだが、何がしかの計画を立てる場合にもこの5つの項目を意識するとよい。
そうすれば、成功する、とは運の要素もあるので確証めいたことは言えないが、少なくとも失敗の可能性を減らすことはできるだろう。