「そんなことないよ」待ちの姿勢

相手に「そんなことないよ」といってもらうこと前提のコミュニケーションがある。

「私なんてバカですから」
「もうじいさん(ばあさん)ですから」
「モテないですから」
「仕事できないですから」

エトセトラ。

本人が本当にそう思っているようには見えない。
本当に確認したいのであれば「私はバカでしょうか|もうじいさんでしょうか|モテなさそうに見えますか|仕事できていますか」と聞けばいい。

あえて自分を卑下することで、相手から「そんなことないよ、あなたは賢いよ|若いよ|モテるよ|仕事できるよ」という言葉を引き出したいだけだ。
この聞き方なら、自分が傷つく可能性が少ないと、そう思っている。
それで何が解決するかというと、何にもならない。相手だって本心からそう思って返答しているわけでもない。もはや定型文のやり取りみたいになっているように思う。

そしてこの手法、繰り返しやられると受け手は疲れる。
「そんなことないよ」と気軽に返して、「どうしてそう思うの?」などと聞かれても困る。
家族や親友ならともかく、普通はその人のこと、そこまで深く考えてないもの。

私は若い頃そのあたりのコミュニケーションがうまくできなかった。
「そうですね、本人がバカと思ってるならバカなんでしょうね」
と直球で返して怒られたこともある。
自分のことを一番知っているのは自分だろう。
その自分がそう判断しているのだから、第三者である私の意見なんて聞く必要があるのか?と思っていた。

今は歳をとって、良くも悪くも世間の機微がわかるようになった。
この発言が「そんなことないよ」を待っている、「そんなことないよ」と返してもらって初めて完成する類いのコミュニケーションであることも理解した。
とはいえ深く突っ込まれると、何も考えていないのがバレてしまう。
最近は「ハハハ」と逃げるようにしている。

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