朝令暮改でもいい。ただし、理由を説明せよ。

経済学者であるJ.M.ケインズが、論敵に過去の発言との一貫性のなさを問われた時の返答。

When my information changes, I alter my conclusions. What do you do, sir?
情報が変われば、結論を変えるさ。貴方は違うのかな?
J.M.ケインズ

彼らしい皮肉の効いた返しで、気に入っています。
実社会でこの発言を引用するシーンは、(幸いにして)ありませんが・・・

情報はころころ変わる、結論も変えなければ

変化の激しい時代と言われています。
情報(外部環境)はころころ変わり、過去の検討ではベストと思えた結論(戦略)があっさりと陳腐化することもあるでしょう。

経営学者のH.ミンツバーグは、その著書「戦略サファリ」にこう書いています。

理論ともいうべき戦略は、その単純さゆえに現実を歪めるものだ

現実は複雑すぎるため、戦略に落とし込む仮定で一部を単純化、省略せざるを得ません。
特定の戦略に固執してしまっては、現実の変化に追随できないでしょう。

もちろん、戦略を策定する必要はあります。
予定を立てないと、どの方向に一歩を進めればいいかもわからないので。

ただし、想定外の事態が起きた時に柔軟に戦略を変更(部品の一部を差し替え、あるいは全交換)する態度は持っていないといけない。
(IT系の人しかわからないでしょうけど、モノリシックカーネルよりマイクロカーネルというイメージ)

そしてこれが難しい。
過去の意思決定に固執せず、再度の意思決定のしんどさにも耐える思考力が求められます。

変節の理由を説明できるか

人間は一貫性を好みます。「ぶれない」人は尊敬されます。

しかし、ケインズも皮肉たっぷりに言ったように、情報(外部環境)が変わったのに結論(戦略)を変えない人は、「ぶれない」と褒められるべきでなく、単に頑固なだけでしょう。

「朝令暮改」「ブレブレ」と批判されないためには、従業員やパートナー企業・取引先に対して、外部環境の変化と戦略を変えた理由を論理的に説明することです。

うまく説明できないのなら、それは本当に単なる「朝令暮改」なのかもしれません。

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