経営コンサルタント(中小企業診断士)としていろいろな企業の課題を見聞きしていると、本来は何らかの目的を達成するための手段だったものがいつのまにか目的となってしまい、機能不全を起こしているケースをよく目にする。
よりよい事業計画を作るための手段としての市場調査だったのが、調査データをどうやって活かすか?ではなく、前年と同様の調査をすること自体が目的となってしまう。調査内容は、事業計画とはまったく連動しないものとなっている。
営業活動を見える化し、より効率的にするために作成した営業報告のフォーマットが、記入すること自体が目的となり、まったく意味の無い報告書の山ができる。その報告書が活用されることはない。
目的が変わることもある。目的が変われば当然手段も変わるはずだ。
また、目的は変わらずとも環境が変わってしまい、これまでの手段では目的を達成することができなくなることもある。
慣性の法則ではないが、組織では一度始まった制度を「辞める」ことは難しい。社長や上司、同僚の否定につながりかねないからだ。
内部では改善が難しいからこそ、外部の経営コンサルタントが憎まれるのを覚悟で「その活動は本当に必要ですか」と問いかける役割を担っているのだが。
いまやっていることは「手段」なのか、それとも「目的」なのか、常に問い続けることで「手段の目的化」をある程度抑制することができる。
目的と手段は階層構造を取る
上位の目的を達成する手段が下位の目的となることがある。
企業全体の目的(仮にAとしよう)は、各部署に手段Aとして降りてくる。各部署はその手段Aを目的Bとして、各課への手段Bを定義する。各課はそれを目的Cとして、課に所属する社員たちの手段Cを定義する。
社員は課の目的を達成するための手段を実行する。
課は部の目的を達成するための手段を実行する。
そして、部は全社の目的を達成するための手段を実行する。
目的と手段の階層構造を意識し、矛盾がないように目的−手段のつながりを構築すれば、組織全体で一貫した活動を行うことができる。