前回、前々回からの続き:
選択肢の構造化
そのままでは複雑すぎる問題を構造化・単純化することで、特定の選択肢に導く手法。
(筆者も含めた)経営コンサルタントが得意としている。
「A案、B案、C案があり、メリット3項目とデメリット3項目をそれぞれ比較した結果、御社に適しているのはB案です」という奴だ。
D案やE案があったかもしれないし、メリットには実は重要な4つめの項目があったのかもしれないが、構造化・単純化された結果、選択肢から意図的に除外されているのかもしれない。
政治なんて複雑さの極致のような活動だと思うのだが、構造化・単純化してしまうと「○○党の陰謀」とか「△△大臣は悪魔」とやたら簡単な話になってしまう。
ゴールの可視化
ゴールが見え、そこまでの距離がわかれば、人はゴールに到達するための行動を取る。
営業部に張り出されたノルマ達成度のグラフなどが好例だ。
逆に、何をどこまでやれば達成となるのが不明瞭な状況では、人は選択肢のなかからどれを選べばよいかわからなくなってしまうだろう。
まとめ〜ナッジを理解し、騙されないように
ここまでナッジの手法をいくつか説明してきた。人をそれとは意識させずにコントロールできるということに、嫌な気持ちになったひとも居るかもしれない。
では、個人での貯蓄は難しいから年金制度というナッジを作った国は悪だろうか?
廃止されれば多数の国民が悲惨な老後を過ごすことになるだろう(年金制度が今後も維持可能かどうかは別問題)。
ナッジは「相手のためを思って」なされるものとそうでないものがある。
年金制度は「良いナッジ」だろうが、悪いナッジだって存在するだろう。
今後、読者が何らかの選択を行う際、選択肢をじっくりと検討しよう。
「よくわからないから初期設定で」としてしまってはいけない。
狡猾な悪人が設計した「ナッジ」があなたにとって本当に有益かどうかは、じっくり考えてみないことにはわからないのだから。