価値の尺度は変わる

先日まで実家に帰省していました。
郷里は長崎県の離島で、長崎・佐世保から高速船で1時間強かかる交通不便な場所です。

10代のころ、娯楽も刺激もないこの環境から出たくて出たくて仕方がありませんでした。
大学進学を機に福岡に出て、その後就職で大阪、東京を経て福岡に戻り、かれこれ25年になります。
その間、実家に戻りたいと思ったことは一度もありません。
そもそも、ITエンジニアも経営コンサルタントも、私が選択する職業は田舎とは相性の悪いものばかりです。

ネットが発達してどこでも仕事ができるようになりました。
ただし、それはあくまで「昔と比較して」の話です。
レベルの高い仕事がしたければ、同業者と切磋琢磨したければ、
ある程度の都市に住む必要があるのは昔と変わりません。

シリコンバレーや東京を見ればわかるように、
残念ながら、世界はフラット化しませんでした。

実家に帰って働く、という選択肢は私の中にはありません。
ただ、こうやって年に何回か地元に帰り、
自宅近辺を目的もなく散歩していると、
懐かしさと心の安らぎを覚えます。

昔は嫌でたまらなかった小さな漁港や、
魚の群れが目視できる透明な海の水や、
巨大なイカが打ち上げられている綺麗な砂浜も、
かつてとは違った視線で眺められるようになりました。

価値の尺度が変わったのでしょう。
この素朴な風景を愛せるようになり、
こういう郷里があることを誇りに思えるようになりました。

あと40年経ち、自分が(ほぼ間違いなく)死ぬ頃にも、
この場所が今の風景を維持できているかどうかはわかりません。
高齢化率や人口を考えると、廃村になっている可能性の方が正直高い。
そう思うと、この瞬間がとても貴重なものに思えてきます。

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