「認められたい」承認欲求のメリットとデメリット(1)

人間の行動の大部分は「他者から認められたい」という動機から発生している。
なかには、誰かに認められるためには、損をしても、法に反しても構わないとする人すらいる。

「認められたい」という思いは誰もが持っており、承認欲求と呼ばれる。

承認欲求とは

「他者から認められたい」という感情を心理学では「承認欲求」と言う。
最近はどちらかというと良くない意味で使われることの方が多い。
いかに自分が人にうらやまれる生活をしているかをSNSで大げさに公開したり、
犯罪行為を動画サイトにアップしたりする人や、
自分のことばかり話す人、周囲から注目されていないと不機嫌になる人は
いずれも「承認欲求」が強すぎることが原因だと言われている。

「欲求5段階説」で有名な心理学者のA・H・マズローによれば、
承認欲求とは「人から認められたい、自分が価値のある人間だと思われたい」
という欲望のことであり、衣食住や団体への所属といった欲求が満たされたのちに人が欲しがるものだそうだ。

承認欲求は尊重欲求とも呼ばれる。
さらに上の段階には「自己実現欲求」というものがあるが、マズローは自己実現欲求を満たすことができる人間はごくわずかだと主張しており、
また現代では衣食住や団体への所属といった要求を満たすのは容易であることから、ほとんどの人間は「承認欲求」を満たすために活動していると言える。

承認欲求が人を成長させる

承認欲求は適切に扱えば人間を成長させる。
上司や同僚から認められたり褒められたりすれば、モチベーションは上がり、仕事を頑張ろうと思えるようになる。
モチベーションには給料や役職など外から与えられるもの(外発的)と、そういった外部条件に関わらず自分の内側から湧き上がるもの(内発的)の二種類があり、
上司からその仕事ぶりを承認された人はそうでない人に比べて内発的モチベーションが高くなることが心理学者の調査で明らかになっている。

また、承認により自己効力感が増すことも知られている。
自己効力感とは「自分がやれば状況を改善できる」という自信のことである。
自己効力感を高めるには成功体験を積むことが一番であるが、
何かをやり遂げたときにそれが成功したのかそうでないかというのは
自分ではなかなか判断できない。
他者から褒められ評価されてこそ、自分は成功したのだと実感でき、自己効力感が高まっていく。

承認は、評価・処遇への満足感も高める。
自分の仕事を上司や同僚がちゃんと見ていて、適切に評価してくれているという安心感は「承認」されることで得られる。
承認は顧客や取引先からのものでも構わない。
調査によれば、事務職よりも営業や販売などといった、顧客と直接触れ合い、日常的に承認が得られる職種の方が評価や処遇に対する満足度は高いようだ。
ちなみに、承認には離職を抑制する効果もある。

承認欲求が人を蝕む

ここまで書いたように承認欲求にはさまざまなプラスの効果があるが、当然ながら副作用も存在する。
承認がやっかいなのは、それが完全に相手の意志によるもので、自分ではコントロールできないところにある。
自分がいくら認められたくても、そのためにどれだけ努力しても、上司が人を認めることをしない人間であれば、いつまでたっても承認欲求は満たされない。

また、どれだけ能力が高くても、経済力や政治力を持っていても、それで承認が満たされるとは限らない。
逆に自分がなんとも思っていないような点を、他者が過剰に承認してくれることもある。
自分でコントロールできないので、承認が得られるかどうかは自分が所属する組織なりメンバーの組みあわせによる「運」の要素が大きい。
承認欲求が満たされなければ、人はストレスを貯めて、どんな方法でもよいので承認を得ようとするだろう。
飲食店で不衛生な行為をして動画サイトにアップする学生や、誰も聞いていないのにSNSで金持ちであることを過剰にアピールする人などは、日常で満たされない自身の承認欲求をいびつな形で満たそうとしているのだと思われる。

(明日につづく)

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