来年執行予定である、令和元年度の補正予算概要が公開されました。
#令和元年度とありますが、実施されるのは令和2年度になります。
令和元年度経済産業省関連補正予算案の概要 (METI/経済産業省)
[blogcard url=”https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2019/hosei/index.html”]
PR資料にわかりやすくまとめられています。
こちらからダウンロード(PDF)
補正予算には中小企業向けの様々な措置(補助金等)が組み入れられています。
まずは「ものづくり補助金」について確認してみます。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は昨年と同様、「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」と一体となり「生産性革命推進事業」としてパッケージ化されています。これはおそらく便宜的なもので、昨年と同様実施時にはそれぞれバラバラの事務局とスケジュールで動くものと思われます。
詳細はPR資料の30ページを確認していただきたいのですが(下記画像)、従来と比較して大きな変化がいくつかあるようです。
複数年分の予算確保
事業目的・概要に以下の記載があります。
中小企業基盤整備機構が複数年にわたって中小企業の生産性向上を継続的に支援する「生産性革命推進事業(仮称)」を創設し、中小企業の制度変更への対応や生産性向上の取組状況に応じて、設備投資、IT 導入、販路開拓等の支援を一体的かつ機動的に実施します。
今回の予算規模は3,600億円と従来の1千億円前後と比較して非常に大きな額となっていますが、これは「複数年」分の予算を確保だからのようです。従来は国から運営団体に直接予算を回していたのですが、今回から国と運営団体の間に中小企業基盤整備機構(以下、基盤機構)が入っています。基盤機構にこの予算(運営費交付金)を渡し、複数年(これは予想ですが、3年分)で事業を実施する。
基盤機構は従来も新連携等に絡む補助金で「初年度*万円、二年目**万円」といった複数年実施タイプの補助金を運用しており、今後のものづくり補助金は同様の方式で運営されるものと思われます。
なお、事務局は従来通り入札となり、「中小企業団体中央会」が受託する可能性が高いと予想します。PR資料の「条件(対象者・対象行為・補助率等)の図表で「民間団体等」と書かれたボックスが中央会になるでしょう。
通年公募
使い勝手を向上させるため、という理由で、以下の表記があります。
通年で公募し、複数の締切を設けて審査・採択を行うことで、予見可能性を高め、十分な準備の上、都合のよいタイミングで申請・事業実施することが可能になります。
これまでのものづくり補助金は年に1回ないし2回程度の公募回数でしたが、「通年で公募」とあるように、公募回数が増え、時期的にも分散する可能性があります。
また、前述の複数年分の予算確保と合わせて考えると、これまでは年度内の予算執行という縛りから短かった「事業期間」が伸びる(年度をまたいで実施できる)可能性があります。
このことは、これまで納期が間に合わないことから補助金の活用を見送ってきた企業には福音です。
まだ明確なことは言えませんが、たとえば納期が1年といった大型の設備が導入できる可能性が高まります。
しかし、事務局やわれわれのような認定支援機関にとってこの制度変更が何をもたらすかはまだわかりません。業務が時期的に分散して楽になるのか、それとも単に公募の数だけ業務が倍増し、地獄を見ることになるのか・・・・・当社は国内でもトップ3に入る数の企業を支援しているので、戦々恐々としています。
成果達成までの期間が5年以内から3年以内に短縮
従来のものづくり補助金は事業終了後5年以内に成果目標を達成すること、という縛りがありました。
例えば昨年は以下のような表記でした。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業により、事業終了後5年以内に事業化を達成した事業が半数を超えることを目指します。
今回、この成果目標の部分が従来より厳しくなっています。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業により、事業終了後3年以内に、以下の達成を目指します。
1)補助事業者全体の付加価値額が9%以上向上
2)補助事業者全体の給与支給総額が4.5%以上向上
3)付加価値額年率平均3%以上向上及び給与支給総額年率平均1.5%以上向上の目標を達成している事業者割合65%以上(番号は筆者付与)
まず、目標達成までの期限が5年以内から3年以内に短縮されています。
1)に関しては、従来も同様の目標が設定されていました(5年で15%)ので、それほど影響はないと思われます。
2)は今回初めて登場する目標です。これまで給与支給額(人件費)は加点の条件の一つとしてありましたが、このように成果目標として設定されるのは初めてです。また従来の加点の条件は今年の1%アップか昨年の1%アップ実績と今年のアップ目標(数字なし)、研修費のアップといった条件だったのですが、今回は3年間で4.5%、年平均1.5%のアップとよりハードルが高くなっています。
目標として「給与支給総額」が設定されるということは、その数値を達成することが前提となります。
ということは、「人件費増」は加点項目から外されるということになると思われます。
#申請者全員が賃上げするので、加点項目として機能しなくなる。
3)に関しては、全体の目標であり個別の事業者が気にする必要はありません。
金額や補助率に変化はない模様
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
(補助額:100万〜1,000万円、補助率:中小1/2 小規模2/3)
中小企業等が行う、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援します。
補助額は1千万円、補助率は1/2〜2/3と、この点には大きな変化はない模様です。
補助率は中小企業は通常1/2ですが、2/3にアップするための条件が存在するか、その条件は何かについてはまだ情報がありません。
昨年を踏襲するのであれば、先端設備等導入計画か経営革新計画の認定取得が条件になるでしょうが、まだ確かなことは言えません。
複数回採択者に減点措置
過去3年以内に同じ補助金を受給している事業者には、審査にて減点措置を講じることで、初めて補助金申請される方でも採択されやすくなります。
毎年のように補助金を受給される事業者には、減点を行い「採択されにくく」するようです。
これはあくまで採択されにくくなるというだけであり、審査の点数が良ければ減点の効果を相殺して、結果採択される可能性はあります。
似た様な制度はこれまで小規模事業者持続化補助金でも行われてきましたが、3年連続で受給している事業者もいます。
要件未達で補助金返還?
このような注記もあります。
要件が未達の事業者に対して、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合や、付加価値額が向上せず賃上げが困難な場合を除き、補助金額の一部返還を求めます
目標未達の場合に補助金を一部返還しなければならないのか、と解釈してしまいそうですが、よくよく読むと、「付加価値額が向上せず賃上げが困難な場合を除き」という但し書きがあります。
付加価値額が向上したけれど賃上げに回さず私腹を肥やす?ような企業は補助金の一部返還を求められるけれど、付加価値額が向上しなければ賃上げも不可能であるため、その場合に返還を求められることはない、と解釈できます。
事業がうまくいかず利益(付加価値額の一部)も増えていないのに、補助金の返還をしたくないがために賃上げを無理矢理行わなければならない・・・・といった辛い事態にはならなさそうです。