以前勤めていた会社での話。
事業再生計画を作成を命じられ、作業を行っていた。
クライアントに話を聞きつつ今後5ヵ年のP/L計画を作り、上司(中間管理職)にチェックしてもらった。
上司はこう言った。
『この「売上総利益」ってところ、「粗利益」にした方がわかりやすいからそうしてくれ』
え、でも会計上、一般的には売上総利益ですよ、と反論したが、
クライアントには粗利益って書いた方がわかりやすいだろう、売上総利益なんて言われてもピンと来ないよ、と再反論され、まあそんなものかなと思い、資料の該当する文字列をすべて修正した。確かに、売上総利益という言葉はわかりにくいよなとも思った。
その後、社長のチェックが入った。上司に同席し資料を確認してもらう。
『なんだこの「粗利益」ってのは、「売上総利益」だろうがこの項目は、修正しろ』
・・・私は驚き、隣に座っていた上司の方を見た。
わかりやすさを重視して文言を変えろ、と私が指示したと、上司が言ってくれることを期待して。
しかし、上司はうつむいたままひと言も反論しなかった。
私はなんだか馬鹿らしくなって、ただうなづいて資料を修正した、というより、元に戻した。
結論が決まっているのなら
これは自分がこの会社を辞めて独立しようと思ったきっかけの一つだった。
もちろん、労働時間が長く、業務負荷も高くこのままでは死ぬか精神を病むと思ったこと、
社内の意思決定の過程が全然ロジカルでなく、いくら議論しても最終的には
社長の好みで物事が決まってしまうことなど、複数の要因が絡み合った結果だったが。
ワンマン社長が幅を利かせる会社なら、社長を口説かなければ物事は進まない。
意志決定者を見つけることが重要で、関係ない人の意見をいくら聞いたところで、「意志決定者がどう考えるか」が全てだ。
逆に言えば、中間管理職の個人的な意見など一顧だにする必要はない。
ワンマン社長が独裁する組織に所属し、物事がわかっている中間管理職は、「社長はどう考えるだろう?」という視点を全ての出発点にするだろう。
それが良いことだとは思わないけれど、処世術としては理解できる。
そして、そんな中間管理職の意見は役に立つ。目的を理解しているからだ。