医者の不養生

仮面で握手

中小企業診断士は、経営コンサルタントの唯一の国家資格だと言われる。
確かに他にはない。
経営士は民間資格だ。
認定事業再生士もそうだし、
雨後の筍みたく乱立するM&Aアドバイザー的なものもそうだ。

いやしくも、国家の看板を抱えて企業経営のアドバイスをするからには、
自分自身の「経営」に成功していなければ、説得力もなにもあったものではない。

コンサル会社に勤めていても、個人事業主でも法人でも、それは変わらない。

口ではやれ経営戦略だ差別化だマーケティングだと言っていても、
「じゃあ、お前はどうなんだ」という問いに回答できなければ、
象牙の塔から机上の空論をほざいている人との誹りを免れない。

中小企業診断士がどれくらい稼いでいるのかについては統計データがある。
(一社)中小企業診断協会が会員に向けて行ったアンケート調査だ。
質問の一つに「あなたのコンサルティング業務の年間売上(または年収)は、おおよそいくらですか」というのがあり、その結果が以下のグラフ。
(企業診断ニュース 2021年5月号の表をもとに作成。一部の項目をまとめた)

このグラフを見るときに気をつけなければいけない点がいくつかある。

一つは、母集団の偏り。アンケート自体の回答率は17.4%である。
また、そのうち当該質問に回答したのは30.6%に過ぎない。
年収が低い層はそもそもアンケートを返信しないだろう。
また、返信したとしてもこの質問だけには回答しないと予想される。
結果としてデータは上振れしている(実態よりも高めに出ている)可能性が高いと思われる。

また、この表現はあまり好きではないが、いわゆる「年金診断士」と呼ばれる方々が多数混じっていると想定される。
年金の足しになればいい、売上は気にしない、社会貢献できれば満足、という層だ。
おそらくグラフのうち300万以下の多数はこれら年金診断士が占めていると思われる。

もう一つは、質問が年間売上、または年収を聞いていること。
こういう問われ方をすれば、人間ならいずれか高い方を申告するだろう。
そして、年間売上が年収を下回ることは原理的にあり得ない。
つまり、皆は年間の売上を申告していると考えていいと思う。
年収で回答したのは、コンサル会社に勤めるサラリーマンのみではないか。

売上ならば、サラリーマンの年収とは一概には比較できない。諸経費を引いた残りである「所得」で比較すべきだ。
仮に経費率を50%とすれば、年商1000万円で初めて年収500万円のサラリーマンと釣り合うということになる。

また、年商が3000万円以上でも、人を雇い経費がかかるビジネスモデルで、社長の役員報酬は少ない、というケースもありうる。
(当社もそんな感じです)

色々考慮すべき事情はあるが、年商1000万円以上を一つの基準とすれば、全体の3割強となり、
この割合が「経営者に助言ができる程度には自身の経営がうまく行っている」と、ざっくりではあるがそう考えていいと思う。

もちろんなかには「凄まじい能力を持っているがワークライフバランスを重視しているため売上は低い」とか、
「品質を維持するためにあえて人は雇わず、顧客数も限定してサービスを提供している」層もいると思われる。

どんなことにだって絶対の回答というのは存在しない。例外は常にありうる。
ただ、誰もが納得できる一つの「成功」の目安として、売上というのは非常にわかりやすい。

目の前の中小企業診断士に「年商はいくら」と聞いてみるのは、彼に助言を仰ぐべきか判断する一つのヒントではある。
口ごもり、言葉を濁されて明確な回答がなかったら? お引き取り願うべきだろう。

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