効率化の果てに

落語「始末の極意」の冒頭で話されることのある小話にこういうものがある。

ある大商店の主人は、10人の使用人を雇っていたが、節約のために5人にする。
それでも仕事に余裕があるので、その5人も解雇し、夫婦だけで経営を続ける。
主人は自分ひとりでも仕事が間に合う、というので妻と離縁し、
最後には自分自身もいらない、と自殺してしまう。

– wikipedia「始末の極意」より

これは笑い話なので極端だけれど、ここまで極端でなければ、現実社会でもよく起きている。
効率化して人件費を減らせば、たしかに利益は出るかもしれない。
コストカット、中でも大きな経費である人件費を減らすのは、企業再生の常套手段ではある。

ITの発達した現在では、ひとりで事業をすることもそれほど難しくない。
アウトソーシングやバーチャル**といったサービスをフル活用すれば、以前ほどには人を雇わずとも業務が遂行できるようになった。

さて、目に見えないものを失ってないだろうか?
解雇した従業員の持っていた技術は?人脈は?
仲間が解雇されるのを見ていた従業員の会社に対する忠誠心はどうなった?
急に事業が拡大した際に、外部の「パートナー」はどこまで無理を聞いてくれるか?

なるべくなら、人件費カットではなく、人員削減ではなく、
別の形で利益率を高めるなり、新商品を開発して売上を増やすなりの手法を取りたいものだ。

どんなに不景気でも好調な同業者は居るわけで、
結局の所、外部環境のせいにするのは言い訳でしかないのだと思う。

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