短期的な節約と、長期的な投資と

10年以上昔の話だけれど、とあるイベントホールのコンサルティングをしていた。
部門別損益とか業務フロー改善とか、グループウェアの導入推進などをやっていた。

サラリーマン時代の話だ。
独立してからは、その会社の方とは疎遠になっていた。

そのイベントホールで好きなバンドのライブがあったので、何人かで車で行った。
ライブが終わり、車を駐車場から出そうとすると、精算機のところにスタッフが立ち誘導をしていた。
よくよく見ると、イベントホールの専務ではないか。久しぶりですねと挨拶をした。
他のところで誘導をしている方も、管理職ばかりだ。一般社員は見当たらない。
専務に聞くと、管理職は残業代を払わなくていいから、夜間の仕事は我々がやっている、とのこと。
経営状態が思わしくないからね、と呟いていた。

経営状態が思わしくないのは、本来経営を考えるべき上層部の皆が現場仕事に時間を割かれているからでは・・と思ったが、もちろんそんなことは敢えて口には出さなかった。
短期的な節約はできるだろう。残業代を払う必要は確かにない。コストは抑えられる。(管理職に残業代が付かないのは、そういう理屈ではないのだが)
ただ、長期的にさまざまなものを失っている気がしてならない。それは抽象的すぎて見落としがちだが、経営には欠かせない、何か。

とはいえ目の前のキャッシュがさびしれば、長期的なことを想像する余裕すらなくなるのも経営者としてはよくわかる。
私だって、来月の決済に支障をきたすような状況になれば、コスト削減のためになりふり構っていられなくなるだろう。

これは経営者の資質とか理念とか、哲学とかそういった問題ではない。
清廉潔白な聖人が会社を潰した例も、どうしようもないひどい悪人が会社を大成功させた例も、どちらもたくさん知っている。

単に、利益をきちんと出し、内部留保を積み上げているかどうかという、テクニカルな話として考えるべきだろう。
手元に潤沢なキャッシュさえあれば、真っ直ぐに道を歩く余裕ができるという、それだけの話。

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