先日、とある場所を訪問した際に、非接触型の体温計で体温を測り入退室管理簿に記入させられた。もはや懐かしさすら感じるやりとりだった。私の前の訪問者は、体温が38.5度と表示されていた。以前のルールに従えば入室は許されないはずだが、彼は何回か計測を繰り返し、36.8度と表示されたタイミングで管理簿を記入した。
アルコール消毒の容器(ポンプ?)を置いているところはいまだによく見る。ただ、利用している人は稀だ。皆、存在を認知しているかどうかすら怪しい。視界にはあるのに、見えていない。それほど重要なことだとは思われなくなったから。いや、飽きたのかもしれない。
企業経営にしろ人生にしろ、何かを新たに始める時には、その行為がうまくいかなかった場合、もしくは一定期間を過ぎて役割を終えた場合にそれを「畳む(辞める)」方法もあらかじめ考えておく必要がある。そうでなければ、「(わずかでも)意味があるのなら」とか「廃止して何か問題が発生したら」とか、「特に誰も困ってないし」とか何某かの理由をつけて、もはやそれほど意味がないことがただひたすら惰性で継続していく。
もちろん、体温計で計測したりアルコール消毒したりしても、それほどの実害はない。厳密に言えばお金や時間を失っているが、ごくわずかだ。でも、その些細なことの積み重ねで、会社が潰れることも、個人の生活が破綻することもあり得る。「これくらいいいじゃないか」は、少なくとも色々なことに責任を持つ経営者が使う言葉ではないだろう。