何にでも「慣れ」というものはある。
何回もやってくると、力の抜きどころもわかってくる。
成功が続いたら、「次回もうまくいくだろう」と、楽観的な気持ちにもなるだろう。
ネガティブに考えすぎるのと同じくらい、ポジティブ過ぎるのも問題になる。
過度な楽観主義は本来検討すべき不安要素を過小評価し、取り返しのつかない失敗を招くかもしれない。
みんなで決めればいい?そうとも言えない。「集団思考(グループシンク)」という、集団の構成によってはむしろ間違った意思決定をしてしまいがちだという説もある。
そんな楽観主義を抑える方法はあるのだろうか?
ダニエル・カーネマンの名著「ファスト&スロー」に、「死亡前死因分析(premortem)」というテクニックが紹介されていた。
意思決定に係わった関係者に集まってもらい、こう言うのだ。
「いまが一年後だと想像してください。私たちは皆で同意した計画を実行しました。ところが大失敗に終わります。どんなふうに失敗したのかを想像し、5分〜10分でその経過をまとめてください。」
将来の失敗を想像させることで、その未来を回避するために、今考えるべき問題をあぶり出す。
このやり方は個人での意思決定の際にも有効だと思う。
会議で楽観的に物事が決まりそうで「まずいな」と思ったら、「死亡前死因分析」を提案してみよう。
失敗を想像するのは気持ちのよいことではない。しかし、想像し対処することで失敗を回避できるのであれば、それくらいの不快感は許容できるだろう。