意志力を理解し、使いこなす。

「意志が弱いので目標を達成できなかった」「強い意志でこのプロジェクトをやりとげる」など、仕事の中で「意志」という言葉はよく出てくる。

どうやら、意志力のある人は仕事がうまくできるようだ。

ところで意志、あるいは意志力とはいったい何だろう?
今回は最新の研究を元に意志力の正体と使いこなすためのノウハウについて書く。

意志力と筋力は似ている

心理学者のさまざまな実験の成果から、意志力は、筋肉と同じ様に使うと消耗するものらしいということがわかっている。
専門的には「自我消耗」と呼ばれ、一日に使える量は、個人差はあるもののある程度決まっている。
意志力を発揮したり決断を下したりすることでエネルギーは徐々に減っていき、エネルギーを使い果たしてすまうと、あっさりと誘惑に負けてしまう。

また、意志力の出所はひとつしかないようだ。
仕事の意志力、家庭の意志力・・というふうに種類ごとに分かれてはいない。
たとえば通勤電車のなかで不快なできごとがあった日には、通常よりも意志力が減った状態で職場へ着くことになる。
普段は我慢できる上司の嫌みもその日は我慢できないかもしれないので、うかつな発言をしてしまわないよう注意した方がよい。

何が意志力を消耗させるのか

いろいろな出来事が意志力を消耗させていく。
怒りを抑える、無理に笑顔を作るなど、感情をコントロールしようとすると意志力は減るし、本当は食べたいデザートを我慢しても意志力は減ってしまう。

仕事をすることそのものでも減る。
仕事自体を楽しんでやっていればそれほど意志力は消耗しないが、そうでなければ業務開始から時間が経つに従って意志力は減っていく。
意志力が減れば、判断力が鈍っていくし、判断そのものを先送りしようとする傾向が出てくる。
ある実験によれば、裁判所での判事は、同程度の罪状を持つ被告人でも判決内容が一日の中で大きく変わることがあるそうだ。
朝一番の判決や昼食の後、おやつの後の判決は比較的軽く、昼食休憩直前や夕方の終業前の判決は重い。

もちろん、こういった傾向を意識して対処している判事も居るだろう。
ただ、そんな彼も朝に夫婦喧嘩をして家を飛び出ていれば意志力が減ってしまった状態で裁判に臨むことになり、不公平な判決を出してしまうかもしれない!

サラリーマンだってもちろん同じだ。
大きな判断が必要な会議は、皆の意志力が十分に残っている可能性の高い朝一番に開催した方がいいだろう。
また、意志力が減ってしまった状態で仕事をする残業というものがいかに非効率かということもこの話からいえると思う。

意志力の鍛え方

意志力が筋力と同じというのなら、なるべく筋肉を使わないよう楽をしたり、筋肉を鍛えるように意志力を鍛えることもできるはずだ。
その方法は下記の通りである。

1)利き手の逆

意志力を鍛えるためにすぐできることは、ふだん何気なくしている作業を利き手でない方の手でやってみることだ。
習慣的な動作の多くは無意識のうちに利き手で行っている。
あえて左手を使うようにすると、自己コントロール能力を高める練習になるそうだ。
ちなみに筆者は両手利きなので、自分でも知らないうちに左手で食事を取っていることがある。
この練習は筆者には効果が無いかもしれない。

2)話し方を変える

意識して話し方を変えることも自己コントロールのためにいい練習となる。
たとえば「えー」とか「みたいな」といった言葉を言わないようにする、省略語を辞めて常に正しい名称を使う、などだ。

意志力の活用方法

1)サインに気をつける、気付いたら健康な食べ物を取る

消耗しているという明らかな「感じ」はない。
かすかなサインはあるので、それを確認し、「あ、いま自分の意志力は消耗しているな」と気付くようにしよう。
いつもよりいろいろなことが気に障ったり、簡単な事さえ決められなかったり、頭や身体を働かせて努力したりするのがおっくうになっていたら、それは消耗のサインだ。
消耗している場合は、間違った決断をしたり暴飲暴食をする可能性が高まるので、早めに回復した方がよい。
意志力の消耗から回復する一番簡単な方法は食べることだ。
砂糖の入ったものでもタンパク質でもいいが、健康的な食べ物を体に入れて30分待てば、グルコースの力によって意志力が回復し、決断できる自分を取り戻すことができる。

2)そもそも、なるべく意志力を使わない

自己コントロール能力の高い人とは、意志が強いというよりも、一日の中での意志力の配分に心掛け、無駄なことに意志力を使わない人だと言える。
アメリカのオバマ大統領は、スーツやネクタイを二種類しか持っていないことで有名である。
今日着る洋服の選択に無駄な意志力を使わないためなのだろう。

3)健康な生活を心掛ける

ぐっすり眠れば意志力は回復する。
健康的な食事や多少の運動をして肉体を健康に保てば、やはり意志力の消耗は少なくなる。
「私の同僚は不摂生な生活をしているけれど、仕事はバリバリできるのだけれど?」という方、その同僚は、健康的な生活をすればもっと仕事ができるようになるのかもしれませんね。

4)はかどらないからといって、他のことをやらない

たとえば90分間でレポートを書き上げると決めたら、たとえレポートが1文字も書けないとしても他のことをしてはいけない。
電子メールやネット、電話や読書に無駄な意志力を使ってはいけない。
レポートがかけなくても、レポートを書く以外の前向きなことをしない。ぼーっとしていれば、いずれ自然にレポートを書き始めるようになる。

まとめ

しっかりとした仕事がしたければ、日常生活にも波風を立てない方がいいということだ。
月並みな話になってしまうが、健康的なものを食べ、軽い運動をし、しっかりと眠る。
それが仕事で能力を発揮する一番の近道なのかもしれない。

最後になるが、ある領域で自分を抑えることを練習すると、生活のあらゆる面がよくなるそうだ。
左手を使う、言葉遣いを変えるなどといった簡単な練習を行うことで、意志力をすぐに消耗しなくなり、ダイエットや試験勉強、家庭生活にもいい影響を及ぼすなら、やってみない手はないと思うのだが、いかがだろうか。

参考書籍「WILLPOWER 意志力の科学 ロイ・バウマイスター、ジョン・ティアニー/インターシフト」
WILLPOWER 意志力の科学

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